「フリーメイソン 秘密結社の社会学」にみるフリーメイソンの姿

フリーメイソン

フリーメイソンってなんでしょうか?秘密結社?慈善団体?

世界的に有名なのにこれほどよくわからない俗説が広まってる団体も珍しいと思います。

日本人はフリーメイソンを全く知りません。それもそのはず。もともと日本ではあまり活動していない団体だからよくわからないんです。

そこでこの本を読んでみました。

フリーメイソン 秘密結社の社会学 (小学館新書)

 

フリーメイソン・秘密結社の社会学

著者は橋爪大三郎氏。東大時代は学生運動をやってたようです。その後マルクス主義に疑問をもち後に社会学者になったという経歴の持ち主。宗教関係の著書も多いです。自身はプロテスタント系(ルター派)クリスチャン。

この本が他のフリーメイソン本と根本的に違っているのは「キリスト教との関係」からフリーメイソンを語ってる点。

どういう考えの持ち主が集まって何をしようとしたのか。

という点を宗教の面から解説しています。

陰謀団体という結論があって、そこに都合のいい情報をあてはめていく他のフリーメイソン本とは違ってますね。

フリーメイソンの歴史

もともとは石工職人の組合

フリーメイソンの起源には諸説あります。

最も有力な説は中世のヨーロッパの石工職人が作った組合(ギルド)が起源です。RPGゲームによく出てくるギルドの元ネタです。

フリーメイソン(free mason)の言葉の意味は

free=自由
mason=石工

です。フリーメイソンとは「自由な石工」の意味。

ギルドは同じ職業の人が集まって作った団体です。様々な職業にギルドがありました。ギルドは地域の領主から様々な特権を与えられました。一般市民には課せられた税金が免除される、労役を免除されるなどの特典がありました。

石工職人は重要なので保護されていたのです。

フリーには免税などの特典があるという意味もあります。
現在でもtaxfree(免税)という言葉がありますが、近い意味ですね。

石工職人のギルドは他の職業のギルドとは違う特徴がありました。

石工は地元を離れて遠い建築現場で働くことがよくあります。遠く離れた地域でも寝泊まりする場所が必要になります。そこで同じギルドの仲間なら別の場所で働いている人でも受け入れるしくみができました。

石工達は集まったり寝泊まりする場所を「ロッジ」と呼びました。

普段は遠く離れたところにいる面識もない仲間をどうやって区別すればいいのでしょうか?そこで組合の中だけで通用する秘密の暗号や挨拶の仕方を作りました。

遠くから来た会員には宿泊施設を提供したり、次の町に行くまで旅費を与えたりして助けあいました。助け合いの団体でもあったのです。

また同じギルドなら知識を教え合うこともあったようです。教育施設の発達していない中世では、石工職人にとっても知識をえるよい組織だったようです。

しかし中には会員ではないのに嘘を言ってギルドに入って知識だけを盗もうとする人もいます。そのためますます会員の間同士で通用する秘密の挨拶や暗号が大事になってきました。

しかし中世が終わり、近代になると各地の職人組合は衰退して消滅しました。社会が発展して職人組合は必要なくなったのです。

思弁的フリーメイソン

16世紀の終わりから17世紀の初めごろ、イングランドでは石工組合だったフリーメイソンに一般人が加入するようになりました。17世紀には貴族や知識人たちが加入した記録が残っています。

職人でない人が集まったフリーメイソンを思弁的フリーメイソンといいます。職人が集まったフリーメイソンは実務的フリーメイソンと区別することもあります。

最初は名誉職として加入したようです。しだいに一般人の割合が高くなって友愛組織の正確が強くなったようです。

石工のギルドに一般人が加入するという現象はイングランドだけで起こったようです。

メイソンは技術者ですから建築学、数学、幾何学など理工系の知識が豊富です。当時は教育機関があまり発達していませんから、職人ではないけれど知識を身につけたい人が加入するようになったのでしょう。イングランドのフリーメイソンの加入資格は意外と低く、ギルドのルールさえ守れば一般人でも入れてもらえたようです。

近代に入り組織の衰退が進む一方で、新しい会員を増やして組織を維持したい考えたのではないでしょうか。

やがてイングランドのロッジでは石工以外の会員が多くなり。近代的なフリーメイソンのもとができあがります。

近代フリーメイソンの特徴

近代的フリーメイソン

現在のフリーメイソンは1717年にイギリスで始まったといわれます。

ロンドン市内にあった4つのロッジが会議を行ってグランドロッジを作りました。そしてグランドロッジを管理するグランドマスターを選びました。

グランドロッジを頂点にしていくつかのロッジが存在するという組織ができたのです。

世界的な本部がない組織

グランドロッジは「本部」のようなものです。でも世界中にグランドロッジは何百も存在しています。国や地域ごとにグランドロッジがあるからです。アメリカでは州が違えばグランドロッジも違うという具合です。アメリカ一国の中でもまとまっていないのです。

グランドロッジには縄張りがあって、その地域では他のグランドロッジは勝手にロッジ(支部)を作れません。

フリーメイソンにはカトリックのバチカンのようなものはありません。世界中の組織を束ねる本部がないのです。したがってフリーメイソンの活動は国や地域によってバラバラです。

1723年にフリーメイソンの憲章が造られました。憲章とは規則です。それまで各地のロッジに伝わっていた古い規則をまとめたものだといわれます。

なぜフリーメイソンは伝統主義なのか

ところがフリーメイソンの「起源」の部分は極端な空想物語になってます。

アダムやノア、ソロモン王、ローマ帝国のアウグストゥス皇帝も様々な建物を造りグランドマスターになった。と書いてしまったのです。どうやらフリーメイソンのロッジでは以前からそのような空想物語が信じられていたようなのですが、近代フリーメイソンの憲章にもそれが書かれてしまったのです。

古代に遡ると書いた理由にはいくつかあるようですが、カトリック教会などの既存の宗教とは距離を起きたいという思惑があったようです。

自分たちは教会よりも伝統がある。だから教会にから独立して活動できる。と考えたのです。

中世の世の中ではカトリック教会は絶対的な力を持っていました。でも神は信じてはいても権威主義的な宗教団体からは距離をおきたい。と考える人もいました。

さらに宗教改革以降は、カトリックとプロテスタントの対立が起こりました。宗派の対立が国と国との戦争にまで発展します。同じ神を信じているはずなのに対立します。

でも石工たちは教会の対立は関係ありません。受注があればカトリックだろうがプロテスタントだろうが建設します。宗教的なこだわりはおいといて、仲間同士が協力しあえる環境を作ろうというのが石工時代のフリーメイソンの発想です。

近代フリーメイソンもその考えを受け継いでいるのです。

共産党とフリーメイソンどっちが秘密結社らしいか?

フリーメイソンははたして秘密の組織なのか?本気で組織を秘密にするつもりがあるのか?かなり疑問です。

橋爪氏は本物の秘密組織として共産党を例にあげています。

ロシア革命前のロシアの共産党は徹底した秘密主義の組織でした。組織は中央集権型で上の命令は絶対です。党員は鉄のような硬い規律を守り組織に貢献しました。

党員自身は原則として偽名を名乗り、家族にも党員であることは知らせない。党員同士もお互いのことは必要以上に知ってはいけない。党員の名簿は作らず、メモはすぐに処分する。組織の誰かが逮捕されても他のメンバーが逮捕されるのを防ぐためです。

ロシア革命前の共産党は非合法組織でした。帝政ロシアの秘密警察の取締から逃れるため徹底した秘密主義を貫きました。共産主義の実現のために秘密で組織を作り活動していたのです。

戦前は他の国でも似たようなものだったでしょう。

ある目的のために組織を作って人知れず行動する。まさに秘密結社そのものです。

それに対してフリーメイソンはどうでしょうか?

確かに、フリーメイソンはあまり活動は公にはしません。他のメンバーが生きている間に「◯◯はフリーメイソンだと」とばらすことは禁止されています。

でも自分でフリーメイソンだと打ち明けることは可能です。ロッジの場所も堂々と公開されています。フリーメイソンの建物には分かるようにシンボルマークが付けられています。

冷やかしで入会して内部事情をバラされたりすることもあります。フリーメイソンには会員同士の独特の挨拶の仕方があるのですが、暴露されても変更せずに使ってます。

本気で秘密を守る気があるのか怪しいものです。

こうしてみるとフリーメイソンより共産党の方がよほど秘密結社的です。

世界組織のようで世界組織でない

フリーメイソンは中央集権型の組織ではなく、地域を束ねるグランド・ロッジのもとにいくつかの支部があります。グランドロッジ同士はお互いの存在を尊重し干渉しません。

つまりフリーメイソンには全世界を束ねる組織がありません。地域ごとにバラバラに活動しているのです。当然、考え方も地域によって差ができます。

フリーメイソンを名乗る組織は世界中にいくつもあります。でも各国のフリーメイソンが独自の活動をしているので世界的なまとまりはありません。アメリカの中にもいくつものフリーメイソンのグランドロッジが存在しています。今でも統一されていないのです。

フリーメイソンの活動は秘密の部分もあるのでよくわからない部分もあります。秘密結社なのだから当然です。すべてを公開する必要はありません。

でも秘密=悪事と考えるのは短絡的すぎます。

一般の会社にだって社員には守らなければいけない秘密はあります。守秘義務というものです。程度の差はあっても組織には秘密があるのが当たり前です。

誰だって、いや社会的地位のある人ほど煩わしい社会から離れて気の合う仲間と楽しみたいと思うこともあるでしょう。

フリーメイソンというと世界を影から動かしている秘密組織という噂があります。

でも実際には世界を動かすどころか、自分たちでまとまって活動することさえできないトホホな団体なのです。

さて、次回はフリーメイソンと陰謀論について書いてみたいと思います。

フリーメイソンは世界を裏から操る秘密結社なのか?