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フリーメイソンは世界を裏から操る秘密結社なのか?

フリーメイソンってなんでしょうか?秘密結社?慈善団体?

世界的に有名なのにこれほどよくわからない俗説が広まってる団体も珍しいと思います。

日本人はフリーメイソンを全く知りません。それもそのはず。もともと日本ではあまり活動していない団体だからよくわからないんです。

でも名前だけは有名。いったい何でしょうね?

ふと気になったのでフリーメイソンについて書いてる本をいくつか読んでみました。そこできづいたのは。

外国人が書いた本はわりとフリーメイソンを友愛組織として紹介してあるものが多いこと。

日本人が書いた本は世界を影から動かしている陰謀組織として紹介してあるものが多いですね。

過去にはフリーメイソンを友愛組織として書いてある本を紹介しました。

フリーメイソン 秘密結社の社会学 (小学館新書)

 

どのような内容なのか興味がある方はこちらを見てください。

理神論:フリーメイソンと神の不思議な関係

 

今回は世界を影から操る陰謀組織として書いてある本を紹介します。

この本です。

フリーメイソン・近現代史を動かし続ける友愛団体の真実

 

目次

フリーメイソン・近現代史を動かし続ける友愛団体の真実

著者は「日本博識研究所」という団体。とくに何かを専門的に研究しているというわけではなく、様々な情報を集めて雑学の本を出してる団体です。主にサラリーマンが読みそうな本が多いです。キュレーションサイト(まとめサイト)を本でやってる感じです。

この本は日東書院から出ているイラスト図解シリーズのひとつ。イラストを多く使用してわかりやすくまとめられています。

前半はフリーメイソンについて歴史や組織についての一般的な知識を紹介しています。多少あおりぎみで書いてある部分はあるのものの、内容的には他の本に書かれてある内容と一致します。

ところが後半は陰謀論的な内容になってます。

ではこの本にかかれている陰謀論的な部分を紹介しましょう。

神の眼はフリーメイソンの証拠?

フリーメイソンのシンボルマークとして有名なのはこれ。

万物を見通す目

万物を見通す目(オール・シーイング・アイ)といいます。

アメリカの紙幣にも似たようなものがありますね。

「全能の目」「プロビデンスアイ」です。

 

だから、この本ではアメリカはフリーメイソンが支配する国だと書いています。

ところが「全能の目」や「万物を見通す目」といわれるシンボルマークはフリーメイソンだけが使うマークではありません。

聖書に出てくる目なのです。

聖書の詩篇33章18節
「見よ、主の目は主を恐れる者の上にあり、そのいつくしみを望む者の上にある。」
などに出てくる主の目に由来します。

「神は常に我々を見守っている」、「神は何でもお見通し」というわけです。

日本風に言えば「お天道様が見ている(から悪いことをしてはいけない)」になるでしょうか?現代人にはなじみのない言葉かもしれませんが。

目のシンボルに「神が見ている」とか「全てを見通す力がある」と考える習慣は古代エジプトのホルスの目に遡ることがあります。

エジプトはアメリカと関係ないじゃないかと思うかもしれません。でも大アリなんです。

アメリカ人の祖先はヨーロッパ人。ヨーロッパ文明はギリシア・ローマ文明を受け継いでいます。ギリシア・ローマ文明はエジプト文明の影響を受けています。欧米の教養人ほどギリシア・ローマ・エジプト文明の知識が深いですし、エジプト文明に憧れを持ってたりします。

もともと「ピラミッドに全能の目」というデザインはヨーロッパで流行っていました。アメリカもそれを使っただけのようです。

このへんは歴史を教養として認識していない日本人には理解できないかもしれません。

そもそもアメリカには歴史がありませんから、権威的なシンボルを作ろうとすると古代文明に行き着いてしまうのは仕方のないことかもしれません。

ちなみに、紙幣に使われている「全能の目」はアメリカの「国璽=国の重要書類に使う印章」を図案化したものです。

また、アメリカの国璽は建設途中のピラミッドに全能の目があるパターン。

ピラミッドの中に目があるフリーメイソンのシンボルとはちょっと違います。

フリーメイソンが命令している?

アメリカの紙幣や国璽には全能の目の上に「ANNUIT COEPTIS」と書かれています。

「イラスト図解フリーメイソン」では「ANNUIT COEPTIS」を「我々の計画に同意せよ」と訳していて、「メイソンが指導的立場にあってそれに従え」と言っているのだと紹介しています。

でも実際には「(神は)我々の行いを指示した」あるいは「我々の行いを支持する」という意味です。

「神に認められた」というのと「国民に認めろ」というのでは全く意味が違いますね。

この「 Annuit cœptis 」という文章は古代ローマの詩人ウェルギリウスが書いた詩がもとになっています。

アメリカは独立戦争を勝ち抜いてイギリスから独立した国です。アメリカを作った人たちが「自分たちが作った国は神に認められたのだ」あるいは「神のおかげで独立できた」と考えても不思議ではありません。

ダビデの星型にMASONの文字?

建国に関わった教養人たちは聖書や古典からさまざまなものを引用して図案や文章を作ったようです。でも現代の教養がない人は意図が理解できないから変な解釈をしてしまうんですね。

あと、六芒星の形に「MASON」の文字が浮かび上がるという話もあります。

 

でも「MASON」を六芒星にするなら一文字足りないんですけど。しかも六芒星にしては縦長で形が崩れてる・・・苦しいなあ。

さらに六芒星はフリーメイソンのシンボルではありません。むしろ長い間ユダヤ教徒はフリーメイソンに入会できませんでした。

こじつけのようですね。

六芒星という結論を見せられると「最初からそうだったのかもしれない」と思いますが、図形はどんな形でもいいですし。あとからこじつけることはできます。六芒星が無理でも五角形や別の形の図形を見つけ出して「最初から仕組まれていた」と説明することはできます。

 

アメリカ大統領はフリーメイソンだらけ

アメリカ初代大統領ジョージ・ワシントンはフリーメイソンです。ワシントンをあわせて15人の大統領がフリーメイソンの会員です。これは現在分かっている人数。

この本では「アメリカの大統領といえば世界で最高の権力者。」「メイソンの組織の強大さを物語る」と書いています。

はたしてそうでしょうか?

アメリカの大統領は国民の行う選挙で選ばれます。

中国みたいに国民が手を出せないところで勝手に国の代表が決まるわけではありません。アメリカ国民がフリーメイソンを嫌だと思っているなら当選させたりはしないでしょう。選挙のときにもフリーメイソンかどうかが争点になるはずです。

大統領に限らず、アメリカでは有力な政治家や財界にもフリーメイソンはよくいます。

GHQのマッカーサー元帥やケンタッキーフライドチキンのカーネルサンダースもフリーメイソン。

もともと欧米諸国ではフリーメイソンになることは名誉なことなんです。一種のステータスになってます。だから財界や有力者に会員がいても不思議ではありません。むしろ彼らはフリーメイソンであること誇りに思ってるし、有権者も気にしていない。フリーメイソンが経営している会社だからといって嫌ったりしないようです。

アメリカにフリーメイソンが多いわけ

他にもアメリカの独立にはフリーメイソンが関わっている。とかアメリカ建国にはフリーメイソンが関わっている。と書かれています。

確かにフリーメイソンの人はいます。

もともとアメリカは移民の国でした。ヨーロッパでは生活できない人が多く逃げ込んでいます。

フリーメイソンはカトリックやプロテスタントも関係ない神の存在だけを信じる理神論の立場を立場をとりました。また神の存在と科学的な考えの両立を目指しました。

理神論については詳しくはこちらをみてください。
理神論:フリーメイソンと神の不思議な関係

そのためキリスト教会から弾圧されました。ヨーロッパ大陸にいられなくなったフリーメイソンが弾圧を逃れるためにアメリカに渡った人は多いと思います。

結果として独立に関わた人にフリーメイソンがいた。ということになるのでしょう。

そもそもアメリカの独立を支援するような強力な組織はフリーメイソンにはありません。

明治維新も坂本龍馬もフリーメイソンが動かしていた?

この本には幕末に日本で活動した「トーマス・グラバー」がフリーメイソンだと書いています。グラバーと坂本龍馬は交流のあったと書いてます。確かに商人同士ですから多少は縁があったようです。どの程度親密だったかは歴史的資料からはわかりません。

この本では坂本龍馬はフリーメイソンに操られていたと書いています。

グラバーがフリーメイソンの一員という根拠はグラバー邸の敷地にフリーメイソンのマークがあるから。

ところが、グラバー邸の敷地にトーマス・グラバーが住む前は別のイギリス人が住んでいました。つまりグラバー邸の敷地にあるフリーメイソンのマークはグラバーが建てたものではありません。別のイギリス人が建てたもの。

イギリス人のグラバーにとってフリーメイソンはただの友愛組織なのでマークがあったからといって壊したりはしないでしょう。

というわけでグラバー=フリーメイソン説の根拠がなくなりました。フリーメイソンが坂本龍馬を操って明治維新を云々・・・という話もただの空想物語になります。

明治維新とフリーメイソンにはそれなりにページを割いているのですが、空想話を聞かされてもね。残念。

都市伝説の本?

こうして「イラスト図解フリーメイソン」を見ていると、前半は確かに知識として面白い部分んがあります。

でも後半は都市伝説的な話が多くなります。

確かにアメリカの有力者にフリーメイソンがいるのは事実でしょう。

でも「だから何?」という感じです。

有力者にフリーメイソンの会員がいる。

というのと

フリーメイソンが組織の意図としてアメリカや世界を動かしている。

とは別問題です。

また、フリーメイソンの会員は組織とは無関係に知り合った者同士で別のクラブを作って活動をすることもあります。でもフリーメイソンの団体は個人の活動まで把握していません。そんなクラブが怪しいことをしていたり、犯罪で捕まったりすると。「フリーメイソンの会員が・・・」といわれることになります。でも確かにフリーメイソンの会員かもしれませんが、それはフリーメイソンとして活動した結果、不祥事を起こしたわけではないでしょう。組織とは無関係です。

警察官が盗みを働いても「警察の任務として盗みを行っているのではない」のと同じです。日本人は組織の責任と個人の責任を区別できません。公私混同してしまうのです。

というより意図的に悪意を込めた報道にするのかもしれません。そのほうがインパクトがありますからね。

でもこの本にはフリーメイソンという組織がどのようにして世界を動かしているかについては書いてません。◯◯はフリーメイソン。だから世界を支配している。という書き方です。これではいまいち説得力がありませんね。

「イラスト図解フリーメイソン」は雑学のタネ本としては面白いのです。都市伝説のネタを披露するときに使ってもいいかもしれません。

日本人はフリーメイソンのことはほとんど知らないので信じる人も多いと思います。

でも、欧米人に対してこの本に書いてあることを紹介すると教養のない奴と思われそうです。

一般教養の本のように思えますが、都市伝説の本でした。

 

イラスト図解 フリーメイソン

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