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食べるプラスチック?トランス脂肪酸のウソ

バター

マーガリンは食べるプラスチック?だから買わない?トランス脂肪酸は病気になるリスクの高いものです。でも、マーガリンの代わりにバターで解決する問題ではないんですね。

気をつけてほしいのは脂肪分をとりすぎないこと。

健康志向の高まりで健康にいい食べ物、悪い食べ物への関心が高まっています。それはいいことです。でも、マスコミやネットの情報にはいいかげんなものが多いことに気が付きました。いまだに後を絶たないトランス脂肪酸の誤解やウソについてまとめてみました。

目次

トランス脂肪酸ってなに?

トランス脂肪酸の科学的な説明になると難しいので省きます。トランス脂肪酸はマーガリンの製造過程で作られる油です。マーガリンはバターの代わりになるものとして発明されました。

バターとは

バターとは乳製品の一種です。牛乳に含まれる脂肪分を集めて固めたもの。100gのバターを作るのに4.8リットルの牛乳がいるので値段が高くなります。

 

マーガリンはどのように作る?

そこで高価なバターの代わりになるものとして作られたのがマーガリンです。入手のしやすい植物油をもとに作ります。

植物油は「不飽和脂肪酸」の仲間です。不飽和脂肪酸は固まりにくいので普通の温度では液体です。不飽和脂肪酸にはトランス型とシス型の二種類があります。原料の植物油はシス型不飽和脂肪酸です。

粘りをもたせるために固まりやすい飽和脂肪酸に変えます。現在は水素添加という方法で作るのが一般的です。ところが水素添加でつくると、一部の不飽和脂肪酸が残ってしまいます。しかも、ただ残るだけではなく最初のシス型不飽和脂肪酸とは違うトランス型不飽和脂肪酸になるものがいます。

製造過程でできてしまったトランス型不飽和脂肪酸が現在問題になっている「トランス脂肪酸」です。

 

なぜトランス脂肪酸を規制するの?

トランス型不飽和脂肪酸を取りすぎると動脈硬化、心臓疾患になる危険性が上がるといわれています。悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らすといわれています。糖尿病のリスクが高まるといわれています。

ガンになるという報告はありません。

アトピーの疑いも出ていますがまだ因果関係はわかってません。

アトピー、キレる子供は原因がわかっていません。でも何とでもこじつけることができます。アトピー、キレる子供という言葉が出てきたら疑ったほうがいいですね。科学的には関係は証明されていません。

 

なぜ欧米で規制が熱心なの?

欧米のように脂っこいものを大量に食べている国では動脈硬化、心臓疾患になる人が多いです。当然、多い死亡原因を減らす方法を考えます。欧米の方がトランス脂肪酸対策に熱心なのはそのためです。

アメリカの死亡原因の1位は心臓疾患なんですね。一番大きな原因の対策を急ぐのは当たり前かもしれません。

WHO(世界保健機構)ではトランス脂肪酸を全カロリーの1%以下に抑えるように呼びかけています。ここで重要なのはマーガリンを食べてはいけないとか、マーガリンに含まれるトランス脂肪酸を1%以下にしろ。とは言ってない。ということです。

全カロリー、つまり人間が食べたものに含まれるトランス脂肪酸を1%以下にしなさい。ということです。

ゼロにしなさい。といわなかったのはWHOも0%にするのが不可能だとを知っているからです。

2015年、アメリカではマーガリンが製造禁止になったという噂が流れました。その正体は「水素添加で作った油を食べ物へ使用することを禁止する」というもの。マーガリンを禁止してるわけではないです。

アメリカでは新しい製造方法の目処がたったから規制ができたんですね。(代わりの製造方法の目処がたつまで規制を待っていたというほうが正しい)。日本も製造方法の目処がたてば規制に入ると思います。

バーガー&ポテト

 

日本人の平均的な摂取量は0.3%以下なので問題ありません。

でも「脂っこい食べ物をたくさん食べる人もいるのだからトランス脂肪酸を禁止すべきだ」という意見もあります。

でもそれは食生活に問題があるのではないでしょうか。トランス脂肪酸を減らしても、脂肪分のとりすぎになる病気になるリスクは残ったままです。

トランス脂肪酸をとらずに変わりの脂肪分をたっぷりとっていれば結局は成人病になってしまいます。

トランス脂肪酸の誤解

わざとなのか無知なのかわかりませんが。トランス脂肪酸は間違った情報が広まっています。マスコミの発進した間違った情報がネットで広がり誤解を広めています。

間違った情報を見ていきましょう。

嘘その1.自然界にはない油である。

トランス脂肪酸は人工的に作られた油。自然界にはないので危険な油というもの。
しかし、自然界にもトランス脂肪酸はあります。
牛、羊、ヤギなどの反すう動物の脂にはトランス脂肪酸が約2~5%入っています。牛肉や牛乳にも入ってます。つまり牛乳から作るバターにも入ってるんですね。マーガリンをやめてバターを食べても解決にはなりません。

ショートニングを使ったお菓子が問題だという意見もあります。でも世の中からトランス脂肪酸の入った製品をなくしてもトランス脂肪酸があなたの口に入ることを防ぐことはできません
それどころが一般の人も自分でトランス油を作って食べているのです。

どうしてでしょうか。

シス型の天然油は熱をくわえると一部がトランス脂肪酸になります。むしろ調理中にできるトランス脂肪酸の方が多いのです。シス型脂肪酸とは植物性天然油に多く含まれる成分です。

トランス脂肪酸はシス脂肪酸が製造途中で変化するものです。調理中に加熱しても同じようなことはおきるのですね。加熱を工場でするか家でするかの違いなのです。

体にいい天然の油といって高価な油を買ってますが加熱したらトランス脂肪酸ができるのでリスクがないわけじゃないんですね。そういう都合の悪い情報は報道されていません。

ushi

 

嘘その2. 融点が高いので血液がドロドロになる。

「不飽和脂肪酸は液体なので血液をサラサラにする」

でも、

「トランス脂肪酸は融点が高いので血液をドロドロにする」

というもの。

「血液がドロドロ、サラサラ」というのは「例え」で使ってるだけで医学的には意味はないらしいです。

それはともかく。

トランス脂肪酸の融点は43~45℃なので体温より高いように思えるかもしれません。
シス型脂肪酸の融点は16から17℃。

でも、動物性の脂、肉に含まれている油の融点はもっと高いです。
肉の脂身が固まっているのはそのためです。バターがかたいのもそのため。
飽和脂肪酸という物質です。

食品中に含まれる主な飽和脂肪酸の融点は

ラウリン酸 44℃ 
ミスチリン酸 53℃
パルチミン酸 63℃
ステアリン酸 69℃

飽和脂肪酸の方がトランス脂肪酸よりも融点が高いですね。

トランス脂肪酸よりも動物性油のほうが融点が高いです。

この理屈なら動物性脂肪分のバターの方が危険。
ということになります。

融点を問題にする人達は動物性脂肪分も全面禁止にしろというつもりなのでしょうか。

でも動物性油でできたバターを食べるプラスチックとはいいませんね。不思議です。

これだけでも融点を問題にすることは意味がないことがわかります。

油が直接血液の中に入ってドロドロにするわけではありません。

嘘3.トランス脂肪酸は体内で分解されない

トランス脂肪酸は体内で分解できないという人もいます。実際にはシス型脂肪酸と同じように体内で分解されます。

なぜそのようなことを言われるのか謎です。
合成して作ったものだから体内で分解できないという思い込みなのでしょう。

嘘4. 天然のトランス脂肪酸はいいけど合成したトランス脂肪酸はいけない

牛や羊にトランス脂肪酸が含まれていることはすでに書きました。
「じゃあ、人工的に作ったトランス脂肪酸がいけないのだ」
と思うかもしれません。

アメリカでも牛肉を食べることは規制していません。
禁止するのは「水素添加で合成した油を食べ物に使うこと」です。

そのせいでしょうか「天然のトランス脂肪酸はよくて人工のトランス脂肪酸はだめなんだ」と思った人がいるようです。

でも、それは間違いです。
牛肉産業はアメリカ、オーストラリアにとっては大切な産業です。下手に規制することはできません。BSEの様に禁止しないのはトランス脂肪酸はとる量を減らせば解決できる問題だからです。

牛や羊の油からトランス脂肪酸を減らすことはできない。
加工食品なら代わりの手段が見つかったら規制できる。

アメリカの規制で「合成した油」とわざわざ言ってるのは酪農産業に影響はでないようにとの配慮です。

天然か人工かの問題ではないんですね。
純粋に経済的、政治的な問題です。
ジャーナリストを自称している人にもそこを勘違いしている人が多いです。あるいは知ってて嘘を言ってるかのどちらかです。

嘘5. 食べるプラスチック

「食べるプラスチック」のキャッチフレーズは、主婦、OL、学生にもウケたらしいですね。ネット検索するといまだにごろごろ出てきます。

かつてアメリカのジョン・フィネガンという人が、「プラスチック化したオイル」と言ったことから始まったという説があります。

植物油を水素添加する工程を「plasticize」と呼んでいたことから「プラスチック化」といわれるようになったのかもしれません。

ちなみに、「plastic」とは「力を加えたときに変形してしまうもの」(専門用語的には、可塑的な物)という意味です。

「plasticize」は「可塑化」ということ。変形しないものを、変形するものに変えるという意味です。

つまりプラスチックの本当の意味は「柔らかいもの」という意味です。

化学的な知識のないものが日本語訳すると「可塑化」とせずに「プラスチック化」としてしまったのでしょう。

プラスチックは庶民にとっては劣化しない人工物の代表のようなイメージ。
この言葉の使い方が変化しない硬いものにしてしまうという誤解を生んだのですね。
プラスチックは本当の意味のまったく逆のイメージで広まってしまいました。

まさに洗脳そのものです。

人の意志をあやつる言葉としてこれほど効果的な言葉はめったにないですね。
コピーライターも真っ青の素晴らしいネーミングです(笑)。

似たようなキャッチコピーに「狂った脂肪酸」「狂った油」というのもあります。
こうなると意味がわからないまま、インパクト合戦に突入しているみたいです。

だから「食べるプラスチック」はインパクトがあってマスコミやネットでアクセスを集めたい人も、好んで使うキャッチコピーになってます。

ちなみにタニタの栄養士がネットで「食べるプラスチック」という言葉を使って炎上してました。この程度の知識で栄養士をしていると思うと怖い・・・

医師にもこの言葉を使ってる人がいますが。自分の無知を自慢しているようなものですね。

嘘6. 人工物だから腐らない

トランス脂肪酸の入っているショートニングで加工したフライドポテトが腐らないとか。マーガリンが腐らないことを理由にして人工的に作られたプラスチックだから腐らないと主張する人がいます。

もともとオリーブオイルやサラダ油は微生物の栄養分になるような成分が入ってません。
だからオイルでで加工した物は腐りにくいです。
オリーブオイルは放置してても腐りませんよね。

シス、トランス関係なく脂肪酸を使えば腐りにくいのはあたりまえなんです。微生物が繁殖しにくいのですから。

ちなみに腐るのと酸化するのは違います。
腐るとは微生物が繁殖して食べ物を分解すること。その途中で微生物が毒素を出すので人間が食べると体を壊すことがあります。

酸化とは酸素などによって化学反応がおきて、酸化物という別の物になってしまうこと。元の構造が壊れてしまうことと思ってもいいです。

だから脂肪酸で加工した物は何週間放置しても腐ってないかもしれませんが。酸化してる可能性があります。もちろん食べると体によくないです。

嘘7.トランス脂肪酸は食品添加物

メーカーには食べ物にトランス脂肪酸を入れるなというクレームが来たそうです。
誰がトランス脂肪酸は食品添加物だと言ったのでしょうか?
トランス脂肪酸は意図的に入れるものじゃないです。

製造過程でできてしまった副産物なんです。
以前は危険性が知られてなかったので、入ったままになってるんですね。

トランス脂肪酸0.08%

トランス脂肪酸0.08% 、 アメリカの基準だと0%表示できる。

 

現在はメーカーの努力もあって、トランス脂肪酸も減ってますね。

あとは「高くてもいいから健康にいいものを選ぶ」
という選択ができるかという問題です。

本気で対策するなら脂肪分を減らす

人間が油を使った食べものを加熱して食べる限り、トランス脂肪酸をゼロにすることはできないんですね。

もちろんトランス脂肪酸には動脈硬化、心臓疾患などのリスクがあります。
食べないほうがいいのは間違いありません。

でも、程度の問題です。少しくらい食べたからと言って病気になるわけじゃありません。

マーガリンやショートニングだけを叩いてすむ問題ではないんですね。

まして、マーガリンをバターに変えてもリスクは変りません。

トランス脂肪酸をできないように完全に飽和脂肪酸にしたマーガリンをつくると、飽和脂肪酸による病気が増えます。

現実に日本人のトランス脂肪酸摂取量は減少傾向にあるかわりに飽和脂肪酸の摂取量は増えています。

厚生労働省の資料によると、日本の飽和脂肪酸摂取量の基準値は7.0%ですが、30代、40代女性は7.6%と超えています。トランス脂肪酸を気にしすぎるあまり、よけいな脂肪をとっているということではないでしょうか。

報道に振り回されてよけいに不健康になってるような・・・
マスコミは視聴率や発行部数が優先。本当かどうかは二の次です。すべて信じるのは危険です。

本当にごく少量でもイヤというならなら。
もう生きていけません。
もっと危険なものはほかにもあるからです。

IRAC(世界がん研究機構)が決めたリストによると。
アルコール(エタノール)もたばこもおこげ(食べ物の焦げたやつ)も発がん性物質。
カフェインも携帯電話(食べ物だけじゃない!)も女性ホルモン(エストロゲン)もトリハロメタンと同じくらい発がん性の疑いのある物質ということになってます。

でも、こんな話をする人はいませんよね。
それはトランス脂肪酸の方が話題性があるからです。

飽和脂肪酸にも動脈硬化、心臓疾患のリスクがあります。

ひとつの問題が起きると、それしか考えなくて別の問題をおこしてしまう。
日本では繰り返し起きていることなんですね。

トランス脂肪酸の入ってない油で加工したフライドポテトやスナック菓子を食べ続けても、肥満、成人病、動脈硬化になるのは同じ。原因になる物質の名前が違うだけなんですよ。

子供ポテト

重要なのは余分に食べてる脂肪分を減らすことなんですね。
もちろん、脂肪ゼロも健康に悪いですよ。
なにごともやりすぎはいけません。

当たり前のオチでつまらないですが。
「バランスのよい食生活」に落ち着いてしまうんですね。

 

 

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