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発がん性物質ベンゼンってどのくらい毒性があるの?

 

ベンゼン(benzene)とは有機化合物の仲間。発がん性物質だというので有名です。食品や土壌汚染、大気、水質汚染などでお時々問題になります。

最近では豊洲の地下から出るのではないかと話題になりました。

ベンゼンの危険性は発がん性だけではありません。他にも毒性があるんです。ところが、意外と私たちの身の回りにも普通にあるんですよ。

ベンゼンってどのくらい危険なものなんでしょうか。お話しします。

 

目次

ベンゼンとは

ベンゼンは有機物の仲間

化学物質は有機化合物(炭素と水素からできている物)と無機化合物(炭素と水素以外のものからできているもの)にわかれます。ベンゼンは有機化合物になります。有機物ともいいます。

ベンゼンは炭素が6個、水素が6個くっついた化学物質です。
化学式では C6Hと書きます。

無色透明な液体で鼻をつくような臭いがあります。ベンゼンのような液体の有機物は有機溶剤と呼びます。ふつうの温度(人間が快適に暮らせる温度、20℃がめやす)では液体です。80℃で沸騰して気体になります。

でも普通の温度でも少しずつ蒸発して空気の中に逃げていきます。この性質は揮発性といわれます。有機溶剤で火災がおきるのはたいてい揮発性のせいです。空気中にたまった溶剤の蒸気に火花が飛ぶと爆発します。静電気のような小さな火花でも爆発するんですね。

引火点は-11℃。つまり普通の温度でも火をつければ燃えます。
水には溶けにくいです。0.18g/100ml。つまり1リットルの水に1.8g溶けます。

ベンゼンそのものはアルカリ性ではありません。中性です。水にほとんど溶けませんから酸にもアルカリにもならないんですね。

ベンゼンの臭い

いわゆる有機溶剤臭ってやつですね。シンナーよりは刺激が少ないですね。刺激は少ないですが不快な感じが鼻の奥に残ります。だからベンゼンでシンナー遊びしようと思う人はいないんじゃないでしょうか。

ベンゼンって何の役に立つの?

発がん性物質として嫌われてるベンゼン。でも、昔から様々な原料に使われてきました。現在でもフェノールなど他の有機物の原料や、他のプラスチック、ゴム、潤滑剤、色素、洗剤、医薬品、爆薬、殺虫剤などの原料として使われてます。だから産業としてはなくてはならないものなんですね。もちろん貯蔵庫や装置の外に漏れないように厳重に管理して製造していますし、製品の中には残らないように作っています。

昔は溶剤として使われていました。ペンキをはがすための溶剤や、接着剤、染み抜きにも使われてました。でも毒性が分かったので現在ではトルエンやキシレンに置き換わっています。さらにキシレンなどもさらに毒性の低いものに置き換わりつつありますね。

 

ベンゼンの毒性

一番知りたいのは毒性ですよね。

発がん性はどうなの?

世界保健機構(WHO)の下部組織、国際がん研究機関(IARC)の発がん性物質のリストにはグループ1になってます。

グループ1とは「発がん性がある」とIARCが認めた物です。
ちなみにIARCのリストにはこんなものがあります。2016年9月現在このような分類になってます。

分類    
グループ1 発がん性がある ベンゼン、ヒ素、アスベスト、6価クロム化合物、ガンマ線、エストロゲングループなど118種類
グループ2A おそらく発がん性がある アクリルアミド、ジクロロメタン、紫外線A,B,Cなど78種類
グループ2B 発がん性の可能性がある アセトアルデヒド、鉛、ナフタレン、ガソリン車の排気ガスなど291種類。
グループ3 発がん性を分類できない ビスフェノールA、コレステロール、水銀、塩ビ、トルエン、キシレンなど501種類。
グループ4 発がん性がない カプロラクタムだけ1種類。

IARCのリストより編集して掲載。

はっきりと人間に対して発がん性があると認めたのがグループ1です。
グループ2Aは「動物実験などの結果から、たぶん発がん性があるでしょう」。
グループ2Bは「よくわかんないけど発がん性がないとはいいきれません」。
グループ3は「データが少ないのでわかりません」
という意味ですね。
グループ4は「たぶんないでしょう」です。グループ4の物質はいまのところ1つだけですが、なんで登録されてるのかよくわかりません。

日本ではグループ2に分類されると発がん性物質として報道されることがあります。実際はまだ可能性があるという段階。

人間に対して発がん性があると認められたのはグループ1ですね。

ベンゼンはグループ1になります。だから、発がん性があるんですね。

日本の法律でも発がん性があると認められてます。労働基準法では、”がん原性化学物質”、”疾病化学物質”にしてされてます。工場でベンゼンを使う場合でも規制があります。

 

発がん性以外の毒性は

発がん性以外にも毒性があります。

・白血球、赤血球が減り悪性貧血になる可能性があります。骨髄に影響して血液を作るのを邪魔しているといわれています。
・生殖毒性、胎児への影響は区分2です。生殖異常の可能性があるグループになってます。
・大量にベンゼンの蒸気を吸い込むと麻酔作用、呼吸異常を引き起こします。
・大量にベンゼンの蒸気を吸い込むと気管炎、喉頭炎、気管支炎、肺での大量出血になるか二世があります。

じつはこちらの方が怖いかもしれません。化学物質でがんになるためには長期間、触れなければいけません。でも、上に書いた毒性は短時間でも大量に吸い込んだら症状がでるんです。

ただし、こうした毒性は一般の人は関係ないかもしれません。ベンゼンを直接扱って仕事をしている人が被害を受けるものです。一般人は大量のベンゼンに触れる機会がないので心配する必要はないと思います。日常的に匂いがわかるくらいの量を吸い込んでる人はいないと思います。

ベンゼンを入手して使ってると上に書いたような被害に遭いますよ。やめた方がいいですね。

なお、ベンゼンは体内に蓄積する可能性は低いとされています。

 

法律の規制

他にも様々な法律で規制されています。

水道法:水質基準 0.01 mg/L
下水道法:水質基準 0.1 mg/L
水質汚濁防止法:有害物質、排水基準 0.1 mg/L
大気汚染防止法:特定物質、有害大気汚染物質 (優先取り組み物質)、環境基準 0.003 mg/m3(年平均値)
土壌汚染対策法:特定有害物質、土壌溶出基準 0.01 mg/L

学校の実験では使われてません。企業の研究室でもほとんど使われてないですね。どうしてもベンゼンでなければいけない時だけです。できる限りトルエンなどの他の物質に置きかえて研究しています。

 

なんでベンゼンがあるの?

渋滞

 

というわけで毒性があるのが分かって、規制も進んでいるんですが。なんでベンゼンがいまだに工場の外に存在してるのでしょうか。

都市ガスを作っていたプラントの跡地からも見つかることがあります。都市ガスを作る途中でベンゼンができてしまうからなんです。豊洲市場で問題になるのは東京ガスの跡地に作ったから、ガスを作るときに出たベンゼンが残ってるんじゃないかって心配してるんですね。東京ガスもそれはわかってますし、残ってることは東京都に伝えてるはずです。なんで今頃問題にしてるんでしょうね。

でも、ベンゼンができるのはプラントの跡地だけじゃないんです。

炭素の多い物が不完全燃焼するとベンゼンはできるんですね。ガソリン車やディーゼル車の排気ガスにも入ってます。排ガス規制もどんどん厳しくなっていますが。一般の人が触れるベンゼンで一番多いのは排ガスからできたものかもしれませんね。

タバコを吸っても出てきます

ベンゼンはタバコの煙にも入ってます。吸ってる人だけじゃなくて、煙にも入ってます。でまわりにいる人も被害に遭うんですね。タバコの害はベンゼンだけじゃありません。他にも有害物質が入ってるので体に良くないのは間違いないです。タバコを吸うのは自由とかタバコは嗜好品と言ってるのは「発がん性物質を撒き散らすのは自由」と言ってるのと同じなんです。

自然界にもあります

ベンゼンは人間が作るだけじゃありません。なにしろ炭素の多い物が燃えるとできることがあるんです。山火事、森林火災、噴火でも作られます。だから絶対ゼロにはならないんですね。

飲み物にも入ってましたね

2006年以降、清涼飲料水から基準値以上のベンゼンが見つかって問題になりました。日本でもメーカーが回収する騒ぎになりました。

そのとき安息香酸とビタミンC(アスコルビン酸)が化学反応してベンゼンができるといわれました。安息香酸は雑菌の繁殖を抑えるため、ビタミンCは酸化防止剤(成分が劣化するのを抑えるため)として入れてます。ただし化学反応には水が沸騰する以上の熱が必要です。普通の温度では心配する必要はありません。

実際にはベンゼンは空気中に存在します。空気1立方メートルあたり3マイクログラム含まれているといわれます。小学校の25mプールにティースプーン(コーヒーや紅茶を飲むとき使う小さなスプーン)1杯分入ってるのと同じくらいの割合です。地球上で飲み物を製造している限りベンゼンは入ってくるんですね。

私たちはふだん空気を吸って生活してます。それで問題が起きてないのですから気にすることはないと思います。

それより高カロリーな清涼飲料水を飲みすぎると生活習慣病になります。そのが危険ですよ。

 

ベンジンとは違います

似たような名前の化学物質にはベンジンがあります。まったく別の物です。間違って使うと病気になる可能性が高くなるので注意した方がいいですね。

 

まとめ

ベンゼンは発がん性物質、それに外にも毒性があります。直接触れない方がいいのは間違いありません。もちろんゼロにできればいいですよね。でも技術的コスト的に無理なので健康に害のあるレベルはどこなのか様々な規制値が設定されてます。

普段生活する分には危険はないと思いますが。排気ガスをできるだけ吸わないようにすればいいと思います。たばこも吸わない方がいいですね。

発がん性はよく問題になります。工場で働いてる人は化学物質への対策をしなければいけません。でも普通に生活している現代人がガンになる大きな理由は加齢と活性酸素の発生だといわれています。加齢は防ぎようがありませんが、活性酸素が多く発生するのは生活習慣の乱れやストレスです。神経質になってストレスがたまる方が発がん性のリスクは高まります。不安をあおる報道を気にしすぎるのも健康には良くないかもしれませんね。

 

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