ホワイト国とは?認定の条件と何が問題なのか?

日本から韓国へフッ化水素、レジスト、フッ化ポリイミドの輸出には経済産業省の許可が必要となりました。それについてはテレビではあまり話題になってませんが、新聞などを見るとときどき話題になってます。

それに加え韓国をホワイト国から外すことも検討中です。早ければ8月2日にも閣議決定か?と言われています。

このホワイト国とはいったい何でしょうか?ニュースを見てもいまいちよくわかりません。

そこで輸出とホワイト国の問題を紹介します。

日本の輸出管理のしくみ

ホワイト国とは何かを説明する前に日本の輸出管理のしくみがどうなっているのかお話します。

日本では軍事目的に利用可能な技術や物を輸出する場合に規制があります。

大量破壊兵器の材料が勝手に輸出され、知らない間に他国で大量破壊兵器が製造されたり、使われたりしたら困るからです。そうなったら日本の信用ガタ落ちです。

そこで輸出した物が他国で武器や核・生物・化学兵器などに転用されるのを防ぐ仕組みがあります。

その仕組はリスト規制キャッチオール規制の二段階になっています。

リスト規制

リスト規制で管理されているのは 核関連物質 です。

通商産業省のHPから抜粋するとこのような物が規制対象になっています。

 貨物等省令第1条
 第1号 核燃料物質又は核原料物質であって、次のいずれかに該当するもの

 イ ウラン又はその化合物
 ロ トリウム又はその化合物
 ハ プルトニウム又はその化合物
 ニ イからハまでの貨物の1又は2以上を含むもの

出典:経済産業省 リスト規制

核兵器の材料になる物ですね。日本からこれらの物質を持ち出す場合はさまざまな手続きが必要です。

核物質以外でも軍事目的に転用可能な物質や技術があります。

リスト規制以外の技術や物質を管理するのがキャッチオール規制です。

キャッチオール規制

これらの物が対象になっています。

1.大量破壊兵器等の開発、製造、使用又は貯蔵等に用いられるおそれがある場合
2.通常兵器の開発、製造又は使用に用いられるおそれがある場合

出典:経済産業省 キャッチオール規制

ちなみにこの手続は事業者が行います。

政府が手続きを行うのではありません。

これは軍事転用可能な材料・技術を輸出する場合は必ず行わなければいけないです。

ただし企業が管理をきちんとしていることが認められば手続きの簡略化などの優遇を受けられる場合があります。

申請するとどのくらいで許可が出る?

申請を受けた経済産業省は輸出先しても大丈夫なのか審査します。輸出先の企業が信頼できると判断したら輸出認可が出ます。認可が出るまでの期間は最大90日ですが普通は1ヶ月程度で許可が出るようです。

普通に90日かかると勘違いしている人も多いようですが。最大で90日です。

中国やイスラエルの企業が輸出相手でも認可されます。よほどのことがない限りは認可されるでしょう。もちろんちゃんと管理をしていればの話です。

ホワイト国になると何がいいのか

しかしキャッチオール規制には例外があります。

輸出先の国がある条件を満たすとホワイト国認定されます。

事業者がホワイト国に輸出する場合は原則3年間、個別の輸出品の申請が免除されます。

3年に一度でいいのです。事業者としては手続きが簡単になってラクです。

ホワイト国認定の条件

ホワイト国になるには最低限「ワッセナー・アレンジメント(WA)」など国際輸出管理レジームの4つのグループに加盟していること。核拡散防止条約(NPT)への加盟していること。

そして。

国際輸出管理レジームを守っていること

が前提です。加盟しているだけではだめです。守れない国はホワイト国にはしない。ただそれだけです。

ではその国際輸出管理レジームとは何でしょうか?

国際輸出管理レジームとは

原子力、生物兵器、ミサイル、通常兵器など、兵器や兵器に転用可能な物や技術の拡散を防ごうという取り組みです。

いくつかの専門のグループがあり個別に活動しています。

原子力提供国グループ(NSG)
 核兵器の製造、開発等に使用される可能性のある設備に関する規制。
オーストラリアグループ(AG)
 化学兵器・生物兵器の原材料・生産設備等の輸出規制。オーストラリアが呼びかけて発足したのでこの名前がある。

ミサイル技術管理レジーム(MTCR)
 核兵器の運搬ができるミサイル、その部品、製造設備の輸出規制。
ワッセナー・アレンジメント(WA)
 戦術核兵器・生物・化学兵器とその運搬ができる兵器の輸出管理の制度。

ホワイト国認定を受けるにはNSG、AG、MTCR、WAの4つに加盟する必要があります。

ワッセナー・アレンジメント

半導体材料に関わってくるのがこちら。正式名称は「通常兵器及び関連汎用品・技術の輸出管理に関するワッセナー・アレンジメント(The Wassenaar Arrangement on Export Controls for Conventional Arms and Dual-Use Goods and Technologies)」

長い名前ですね。普通は省略して「ワッセナー」といいます。現在42カ国が加盟しています。冷戦時代に共産主義国への輸出を管理する「ココム」がありました。冷戦終了後ココムは終了しました。対象国を共産主義国以外に拡大して世界規模で兵器および関連技術の拡散を防ごうというとりくみがワッセナーです。

そういえば昔日本がココム違反して国際社会から叩かれたことありましたね。守らなければ国際社会の信用を失うという過去があるのです。

ワッセナー・アレンジメント(WA)加盟国

加盟国は2019年7月現在42カ国。

アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、クロアチア、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、インド、アイルランド、イタリア、日本、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、韓国、ルーマニア、ロシア、スロバキア、スロベニア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、ウクライナ、英国、米国

日本の他、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ロシアなどほとんどの先進国が加盟。韓国も加盟しています。

中国、北朝鮮など旧共産圏国の一部。台湾、イスラエルは加盟していません。

だから中国、台湾、イスラエルはホワイト国にはなりません。でも中国や台湾、イスラエルは文句は言ってきません。正規の手続きをすれば輸入できるからです。

ワッセナー加盟国の活動内容

加盟国はワッセナーに基づいて国内の法律を作って輸出品の管理を行っています。

ワッセナーは紳士協定なので法的強制力はありません。この協定に違反したからと行って国際的な制裁があるわけではありません。

だからといって守らなくていいという理由にはなりません。加盟しているのに守っていなかったら「信用できない国」になってしまいます。

信用できない国に対して審査が厳しくなるのはどの国も同じです。

輸入したのにどのに行ったかわからない。
国内で使ったことにして別の国に横流ししている。
さらに輸出しておいてどこに行ったのかわからないのを放置している国も輸出管理レジーム違反です。

ホワイト国に認定されている国

2019年7月現在。ホワイト国認定されているのは以下の国です。

ホワイト国
アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、大韓民国、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、アメリカ合衆国

これらの国は「国際輸出管理レジーム」をきっちり実施している国。つまり兵器の拡散をしない国なので「シロ」と認定されています。だからホワイト国と言います。

あなたの国はちゃんと管理してるから特別に手続きを簡単にしますよというのがホワイト国認定です。

2019年7月時点では韓国はまだホワイト国認定です。でも現在日本政府は韓国をホワイト国から外そうと考えています。

ホワイト国認定が外れると企業は大変かもしれません。輸出をするたびに許可が必要だからです。手続きをするのは企業なのです。

相手国政府(この場合韓国)としては戦略物資の管理をしなくていい。むしろ輸入する側の政府の負担が楽になるのです。

ホワイト国を外れるとどうなる?

もしかするとホワイト国認定取り消しはフッ化水素、レジスト、フッ化ポリイミドだけの問題と思っている人もいるかも知れません。

ではそうではありません。原則として。

国際輸出管理レジームで規定されている全ての製品や技術が経済産業相の許可の許可がないと輸出できないのです。

半導体だけではありません。高純度セラミックや炭素繊維、日本が得意な複合材料など。化学兵器の原料に使える化学物質など軍事転用可能な多くの製品が輸出するたびに経済産業相の許可が必要になります。

経済産業省のサイトには管理対象物質が載っています。

経済産業省 安全保障貿易管理

このリストにある物質は輸出の許可が必要なものです。

兵器になる物質ですから規制は当たり前です。でも世間では規制という言葉はネガティブな単語として使われることが多いようです。とくにマスメディアでは「規制=制裁や嫌がらせ」とあえて誤解させる報道をしているのが問題です。

だから経済産業省も「輸出管理」という言葉を使っています。だから一般世間向けには「輸出管理」を使うのが適切ですね。

マスコミは武器を輸出する企業を死の商品とか言って非難します。しかし同じマスコミが兵器に使える材料を簡単に輸出しろと主張するのは矛盾しています。

またテレビや新聞などで韓国のホワイト国指定解除に対して影響が出るので好ましくないという意見が出ています。まるで輸出が止められるみたいな報道もみられます。認定解除になった最初の数ヶ月は生産に遅れがあるかもしれませんが。あとは普通どおりに生産できるはずです。

もちろん輸出先がきちんと物資の管理をして手続きをすればの話です。

現実に中国や台湾はホワイト国指定してなくても問題なく貿易できています。戦略物資をきちんと管理していれば何も問題ないのです。

韓国に影響が出ると主張している人は「韓国は戦略物資の管理ができない国」「公表できないことをしている国」だと知っているのでしょう。うしろめたいことがあるから騒いでいるのでしょう。

ホワイト国はグループAに名称変更

8月2日。通産省は優遇国を「ホワイト国」と呼んでいたのを、「グループA」と呼ぶことにしました。輸出管理の対象国をよりはっきりさせるためだそうです。