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韓国ホワイト国除外をめぐる報道とフェイクニュースの正体

報道

最近話題になったフェイクニュースといえば日本が韓国を貿易管理の優遇国から除外についてのニュースです。

新聞・テレビ・ネットニュースが報道した情報の中には視聴者や読者に間違った印象を与える嘘の情報も混ざっていました。

どのような嘘の報道が行われたのか、何が問題なのかについて考えてみました。

目次

ロイターが流したフェイクニュース

ロイターの記事がもとになった

日本が韓国をホワイト国から外す8月2日を目前にした7月30~8月1日にかけて。アメリカのポンペオ国務長官が仲介する。日米韓外相会談で「アメリカ政府の仲介案が出るのではないか」と報道されました。アメリカロイター通信の報道が始まりです。

ロイター通信(日本語版)7月30日の記事には

ある米政府高官は30日、日韓が話し合いの時間を確保するための「スタンドスティル(休止)協定」を締結するよう米国が求めたことを明らかにした。

これを受けて日本の新聞などマスメディアはアメリカが日本と韓国を仲介する。日本に対して韓国のホワイト国除外を延期を促すと報道しました。

ただしアメリカのロイター通信のサイトにはこの記事はありません。

7月31日。菅官房長官の記者会見の後に掲載された記事にはポンペオ国務長官の発言と政府高官の休止協定についての発言が載っています。アメリカ版では政府高官の発言とポンペオ国務長官の発言がひとつの記事にまとめられて31日に掲載されたのかもしれません。

ロイターのフェイクをコピペをする日本のマスメディア

このロイター報道をうけて日本の各メディアが報道しました。

日本国内の大手メディアは「アメリカは仲介を行ってホワイト国除外を求める」という内容の報道が相次ぎました。

例えば共同通信は7月31日このように報道しました。

米政府高官は30日、日本による対韓輸出規制強化など一連の日韓対立を巡り、現状を維持し新たな措置は取らない状態で交渉する協定への署名を求める仲介案を提示したと明らかにした。事実上、日本に安全保障上の輸出管理で優遇措置を取る「ホワイト国」から韓国を除外する手続きの延期を促す内容で、一層の対立激化を回避させたい考えとみられる。ロイター通信が伝えた。

さらにポンペオ国務長官が河野太郎外相、韓国の康京和外相と仲介案について協議する見通しと報じています。

朝日新聞もフェイクニュースを拡散

7月31日。朝日新聞の独自取材の記事として。調停案の詳細として日本は輸出規制強化の第2段を進めない(韓国のホワイト国除外を停止する)。韓国は徴用工問題で差し押さえた日本企業の資産の現金化を停止する。

さらに、ホワイト国から韓国を除外することをトランプ政府が憂慮、閣議決定をしないように安倍晋三政府に求めた。

と報じました。

政府がマスメディアのフェイク報道を否定

菅官房長官が7月31日の記者会見でアメリカからの仲介の提案について

「そのような事実はない」と否定しました。

つまり、マスメディアの報道は嘘でした。

大手新聞社がフェイクニュースを流しているのです。そんなことをして許されるのでしょうか?

日本のフェイク報道に一喜一憂する韓国メディア

おもしろいことに韓国では日本のマスコミ報道を信じているのです。韓国メディアは朝日の報道をとりあげて「ホワイト国解除がなくなるかもしれない」と希望をもって報道していました。

韓国は日本のマスメディアを常にチェックしています。韓国のマスメディアは朝日新聞やNHKの報道を日本国民の世論、日本の多数派の意見と捉えているようです。その結果、韓国人が日本の世論を読み違えることもあるようです。

報道とは情報の劣化コピー

今回の報道でわかるように

報道の世界では

アメリカの報道→日本のマスコミがコピー→韓国のマスコミがコピー

という流れがあります。

報道とは地道な取材で情報を集めるものだと思っていました。でも現代の報道は違うようです。他の報道機関のコピーをして、適当なコメントと付ければ成り立つのです。

まるで素人がやってるブログのまとめ記事と同じでです。

しかも伝言ゲームのようにコピペされるたびに内容がおかしくなります。途中で勝手な情報が付け加えられることもあります。読者や視聴者のもとに情報が届くころにはどこまでが本当でどこまでが嘘なのがわからなくなっていのです。

ポンペオ国務長官の意図は北朝鮮対策

7月30日。アメリカのポンペオ国務長官はASEAN外相会談が行われるバンコクに行く前、記者団からの質問に答えました。いくつか出された質問の最後に日韓関係についての質問がありました。

ポンペオ国務長官の発言内容は以下の通り。和訳するとこうなります。
「私はカン外相と会い、河野外相と会い、そしてその2人と会い、前進できる道を見つけられるように勧めます。彼らは素晴らしいパートナーです。彼らは北朝鮮の非核化について我々と日韓は密接に働いています。ですから我らが二カ国それぞれにとってよい立場を見つけられる手助けをすることができるのであれば、それがアメリカや二カ国にとって重要です。それで私たちは良い会話をして、よい立場になることができるのを助けることができることを望みます」と答えています。

この全文はアメリカ国務省のHPに載っています。ポンペオ国務長官がこのように発言したのは事実でしょう。

米国務省 ポンペオ国務長官の発言 に原文があるので英語の分かる人は見てください。

ポンペオ国務長官の発言はアメリカ人らしくない非常に回りくどい言い回しです。これは記者の質問にとっさに答えただけ。熟慮した内容ではない、といえます。日米韓の外相会談があるのは事実です。韓国が議題として持ち出すので関わらないわけにはいかないでしょう。

7月31日。この記者会見をうけて日本のマスメディア各社は似たような内容の報道をしました。

例えば、共同通信はこのように報道しました。

ポンペオ米国務長官は30日から31日にかけてバンコクへ移動する機内で、日韓対立の悪化を踏まえ、バンコクで河野太郎外相と韓国の康京和外相との日米韓外相会談を行うと表明し、両外相に「前に進む道を見つけるよう勧める予定だ」と仲介する考えを示した。

どの報道機関も内容は変わりません。

でも、アメリカの関心はあくまでも北朝鮮の非核化。そのためにポンペオ長官は日韓の話し合いができるように願望を語っているに過ぎません。輸出管理の問題を仲裁するとは語っていません。

対北朝鮮問題で軍事に直接関わるのはGSOMIA。つまり韓国がGSOMIAを破棄しないよう日韓に話し合いをうながすのが目的なのです。日本が輸出管理を強化しないように仲裁案を出すのではありません。

もちろん韓国側は外相会談で輸出管理を話題にするでしょう。アメリカ政府関係者もリップサービスとして「両者に冷静な対応をもとめる」「話し合いを希望する」くらいのことは言うでしょう。

GSOMIAの交渉は外務省が担当します。だから外相会議で議題になるのです。防衛大臣が交渉するわけではありません。

ところがロイター通信の報道をもとに日本や韓国のマスメディアは輸出管理をめぐってアメリカが仲裁案を出す日本に優遇措置撤回の一時休止をもとめる。などの報道が流れました。これは事実と違います。フェイクニュースです。

そもそも8月2日の午前に閣議決定をするのに8月2日に日米韓外相会談で輸出管理の話をしたのでは間に合いません。

全体の流れをみて判断すると

たしかにポンペオ氏はトランプ大統領よりも韓国に同情的です。ポンペオ氏個人はできれば日韓が折り合いをつけてほしいとは思ってるでしょう。

でもアメリカ政府としては貿易管理について積極的な関わりをするつもりはないのです。

アメリカ政府として韓国のホワイト除外を阻止したいのならトランプ大統領から安倍首相に連絡が行ってます。ところがアメリカの動きはASEAN外相会談を利用しての会談どまり。ASEAN会議の「ついでに会談やりました」という雰囲気です。「アメリカは日韓に友好を求めている」という姿勢を表現しただけ。ポーズをとっただけです。真剣味がありません。

一方の、日本政府はもちろん、親韓派の自民党議員、公明党も表立って反対している様子はありません。むしろまとまっている様子さえあります。アメリカが圧力をかけてきたらここまでまとまることができるでしょうか?

これはアメリカのお墨付きをもらっている。そこまでいかなくても「輸出管理に関してはアメリカ政府が阻止することはない」と日本の政府関係者が考えている。と読み取れます。

フェイクではない?

菅官房長官の発表をうけてネット上では「フェイクニュースだ」という話が広がりました。

するとそれにたいして「フェイクではない」という発言もネット上で見られました。

外相会談が行われたのは事実、ポンペオ長官が日韓の話し合いについて発言したのも事実。
ミスリードな部分はあるがファクト(事実)があるのだからフェイクニュースではない。

という意見です。

「外相会談の有無」や「ポンペオ長官が発言した」という事実は問題ではありません。肝心なのはその内容です。あたかも「アメリカが日本に対してホワイト国除外を延期せるような提案を行った」と思わせる報道がフェイクなのです。

それにスタンドスティル(休止)協定や、朝日の報道にあった仲介案については日米韓どの政府機関も発表していません。

玉石混交のネット社会ですから様々な意見があるのはかまいません。日本では表現の自由があります。大事なのは情報の受け取り側が惑わされないことです。

報道機関が世論を誤った方向に導く作為的な報道をしていると言わざるを得ません。

確かにネット上でよく見られる根も葉もない全くの作り話ではなかったかもしれません。

でも、現実には「事実」を集めて「嘘」のストーリーを作ることは可能です。

本物の詐欺師は事実の情報を並べて正反対のストーリーを作ることができるのです。この騙しのテクニックは陰謀論問題とも関係するのでいずれ別の機会でも紹介しようと思います。

そういった作為的な報道を日常的に行っているのが日本や世界の報道機関です。

フェイクニュースより怖いセミフェイクニュース

ファクト(事実)があるからフェイクではない。という考えは机上の理論だけで考える人、目先の情報に振り回される人が陥りやすい失敗です。ほとんど言葉遊びと同じです。大切なのはそこではありません。

問題なのは事実を盛り込みながら情報の受け取り手に誤った認識を植え付けること。これがマスコミが行っている報道です。もちろん全てがそうだとはいえません。でも政治やさまざまな利害が絡む問題では作為的な報道が増えます。

最近では根も葉もない作り話のフェイクニュースと区別してセミフェイクニュースともいわれます。半分は本当、半分は嘘。という意味です。セミフェイクは一部は事実を報道しているのであたかも全てが本当かと信じてしまいます。

嘘を見破りやすいフェイクニュースよりセミフェイクは見破るのが難しい。だからセミフェイクの方が怖いのです。

あなたもマスコミの報道には気をつけてください。報道に事実が混ざっているからといって報道がから導き出される結論が正しいとは限らないのです。

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