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サイコパス・脳科学が明らかにする良心を感じにくい人達

 

「サイコパス?なにそれ」
「聞いたような気もするけどよくわからない」

というわけで本屋で手にしたこの本。タイトルもそのものズバリ「サイコパス」著者は「中野信子」テレビではなかなか面白いことを言ってる人なので興味をもって読んでみました。

サイコパスと聞くと、凶悪犯罪者のイメージがあるかもしれません。でも意外と世の中にはみかける人たちらしいです。あなたの身の回りにもいそうです。人の痛みを感じにくい人。といえばいいのでしょか。

中野氏自身がサイコパスを研究してるわけではなさそうですが。世界のサイコパスの研究についてコンパクトにまとめられた本になってます。これからサイコパスを勉強しようという人にはちょうどいいんじゃないかと思います。

 

目次

サイコパスとは

サイコパスとはどんな人のことなのか

はじめに。サイコパスはまだまだ研究中の分野。精神・心理学のいつものパターンで、はっきりと「これ」という定義はありません。したがってこんな説明になってしまいます。

連続殺人犯などの反社会的な人格を説明するために開発されて診断上の概念。

なにやら難しいですね。ようするに普通じゃ説明できないような異常な考え方をする人を説明するため考え出されたものです。病気の患者のように”サイコパス”という病気になってる人がいるんじゃなくて、行動や心理を分析して一つのジャンルにした呼び方です。

日本では「精神病質」と訳されてきました。精神病そのものとは違いますが、精神的に異常がある人だと考えられているようです。

 

中野信子氏によるとサイコパスをもう少し詳しく説明すると。

ありえないようなウソをつき、常人には考えられないような不正を働いても、平然としている。

 

凶悪犯や詐欺師のようなイメージでしょうか。そこまでいかなくても人を騙しても平気な人はいますよね。自分の利益のために平然と人を騙す。でもそれだけなら沢山います。ただの嘘つきとどう違うんでしょうか。

サイコパスにはこんな特徴もあります。

ウソが完全に暴かれ、衆目にさらされても、全く恥じるそぶりさえ見せず、堂々としている

 

悪いこととしても悪いと思っていないようです。むしろ居直ってる。本を読んでいくとサイコパスの中には恥じたり反省する素振りをする人はいるようです。でもそれは刑を逃れたり軽くするための演技のようです。本心では罪の意識はないようなのです。

過去に違った発言をしていても平然と「言ってない」とウソをつくんです。

さらにこんな特徴もあります。

「自分は不当に避難されている被害者」「悲劇の家中に有るヒロイン」であるかのように振る舞いさえする。

加害者なのに被害者のふりをするんですね。被害者を装うのは女性のサイコパスに多いそうです。

性的に奔放なことも多く、色恋沙汰がたえない人もいるようです。

サイコパスは犯罪を犯したのに反省することなく。自分の正当性を主張するための手記を発表することもあります。そういえばそんな犯罪者いましたね。

サイコパスは犯罪者とはかぎらない

こう書くとサイコパスは犯罪者のことだと思うかもしれません。でもそうとは限らないのです。犯罪とは縁がなさそうな人でもサイコパスに分類できそうな人はいるそうです。

サイコパスの特徴

この本に書かれてるサイコパスの特徴はこのようなものです。

・外見が魅力的。
・トークやプレゼンテーションが優れている。
・ナルシスト的なところがある。
・大舞台でも堂々としている。
・多くの人が不安を感じる場面でも冷静で堂々としている。
・お世辞がうまく、人を引きつける能力が有る。有力者を味方にしたり信者を獲得することがる。
・よくウソをつく、話を盛る、主張をよく変える。
・ビッグマウスだが飽きっぽい。
・批判されても折れない、懲りない。
・態度が大きい。尊大。傲慢。
・付き合う人がよく変わる、付き合いが亡くなると悪口を言う。
・人当たりがよいが、他人に共感はしない。

もちろん全てに当てはまる人はそうはいないと思います。でもいくつも当てはまる人はいますよね。

サイコパスは人気者

特徴を見てると意外と有名人にも多いと思いませんか?おどろいたことにサイコパスには人々から支持を集める能力があるんですね。

犯罪者にならなかった人、あるいは犯罪者になっても復帰した人の中には人々から人気のあるサイコパスもいます。

サイコパスは人の心理をつかむのが上手いようです。時として人気ものになります。テレビのコメンテーターから一般の人々まで。多くの人が騙されるそうです。

英雄的に扱われたり、不当に貶められてる被害者にされたり。なぜかサイコパスには人を惹きつける能力があるようです。反発する人がいる一方で、熱烈に支持する信者がいるのもサイコパスの特徴のようです。

 

サイコパスの研究

サイコパスについては世界中で様々な研究が行われています。この本ではいくつかの研究例が紹介されています。

心理面からみたサイコパス

「共感」はしないけど「理解」はできる

他人の痛みや苦しみに共感しないばかりではありません。ある種のサイコパスの中には知能は高いし感情を読み解く能力に優れている人がいます。そんなサイコパスは人の痛みや苦しみを「理解」することはできます。

するとどうなるか。どうすれば人が「苦しい」「嫌だ」と思うのか知っている。それを利用するんです。

最初は人にやさしくして信頼を得ます。信頼関係ができると暴力や無茶な要求をする。人を追い込んで謝罪させます。相手が謝ると優しくなる。その繰り返しで人を服従させるんですね。アメとムチの使い分けが極端なくらい上手いんです。

これってどこかで聞いたことがありますよね。そうです、DVやブラック企業の経営者です。DVやブラック企業の経営者には単に暴力的・高圧的なだけのひともいます。でも、あきらかにサイコパスと思われる例がありますね。

自分の得には敏感だが他人の得には無頓着

サイコパスは自分の得には敏感です。だから自分が得することなら犯罪行為も平気です。というより、罪の意識がありません。

そのかわり、人が得してもあまり気にしません。「妬み」の感情が希薄なんです。人を妬んで攻撃してもいずれ自分に跳ね返ってくる。そうすると自分が損するかもしれない。という損得勘定が働くようです。復讐が恐いからじゃなくて、得にならないことはしない。と考えるんです。

身体的特徴からみたサイコパス

男性ホルモンが多い?

犯罪者としてのサイコパスには暴力事件を起こす人が多いです。もともと犯罪者の人格を定義するものだったから当然です。男性ホルモン(テストステロン)の強い人は攻撃性や競争心が強くなる傾向があります。男性的な外観をしているという研究結果もあります。暴力ざたをおこすサイコパスにはそのような傾向があるのかもしれません。でも被害者を装うタイプや女性のサイコパスには当てはまらない場合もあります。

心拍数が少ない?

ある研究では、サイコパスは心拍数が少ないという研究結果があるそうです。人間は恐かったり、不安になると心拍数が上がります。心拍数が上がりすぎると人間の脳は不快に思うので、心拍数の上がることをやめたり、遠ざけようとします。恐怖や不安を避けようとする人間の動きそのものですね。

でも、心拍数が上がりにくいと脳が不快に感じにくいんです。だから、他の人が躊躇するようなことでもできてしまう。普通の人は「ばれたらどうしようと」と思うとドキドキします。でも、サイコパスはドキドキしない。平気なんです。

逆に普段が低すぎて不快なので、心拍数が上がるようなことをして快楽を得る人もいるようです。連続殺人犯とかはこれに該当する人もいるそうです。

脳科学的なサイコパスの特徴

科学の発達でいくらか脳内の仕組みが分かってきました。サイコパスを脳の働きで説明しようという研究が行われています。サイコパスの脳の働きにはある特徴があるそうです。

痛みや苦しみを感じにくい

人に対する「痛み」や「苦しみ」を共有する部分の働きが鈍いようなんです。つまり、普通の人ならこんなことしたら、死んでしまうかもしれない。苦しんでしまうだろう。という場合でも平気なんです。

恨みが原因で犯罪をする場合は恨みを持つ相手に苦しみをあたえようとうします。でもサイコパスの犯罪はそうじゃないんです。相手が苦しむとか死ぬとかは関係ない。自分にとって都合がいいからそうするだけ。目的が達成されるなら被害者は誰でもいいんです。

人の痛みに共感しない。人を傷つけても平気です。だから平気で人を騙せるんですね。

良心が効かない

サイコパスの脳は扁桃体の活動が低いそうです。扁桃体は不安、恐怖、喜び、快感という情緒的な部分を司る器官です。

恐怖や不安を感じにくい。ということは犯罪を犯して捕まったら恐い。という感情が働きません。脳が恐怖を学習しないんです。だからいつまでたっても罪の意識がない。だから犯罪を続けます。

また、大脳の前頭前皮質は衝動にブレーキをかける役目をします。カッとなって「殺したい」と思っても、正常な人なら「そんなことをしてはいけない」とブレーキがかかります。それが前頭前皮質の働きです。

眼窩前頭皮質は人に対する共感を司る部分です。眼窩前頭皮質の働きが低いと人の痛みがわからない。理屈では理解したつもりになっても、感情としてはわからない。

サイコパスは前頭前皮質や眼窩前頭皮質の働きが弱いと言われています。

脳科学的には、扁桃体、前頭前皮質、眼窩前頭皮質の異常で起こると説明されます。一つだけの異常もありますし、幾つかの異常が重なることもあります。あるいはこれらの結びつきの弱さが原因となることもあるようです。

もちろん、脳の研究はまだまだ始まったばかり。扁桃体がどの程度働きが弱いのかとか。個人差もあるだけにそう簡単には結論は付けられません。でも表面的な分類だけでなく、脳の働きから解明しようという研究は興味があります。

 

サイコパスは世の中にもいる

もともとサイコパスは犯罪者を分類するための専門用語でした。ところが、犯罪者とまではいかないまでもサイコパスといえるような脳の働きをしている人は一定数いることが分かってきました。アメリカの研究では4%の人はサイコパスに分類できるそうです。

しかもサイコパスに分類される人は有名人や地位の高い人の中にも多いようなんです。

サイコパスの治療は難しい?

現在ではサイコパスは治療は難しいとされています。逆に下手なカウンセリングや精神的な治療は逆に犯罪性を高めてしまうと言われます。人の精神を学ぶことによって、どうすれば人を騙せるのか知識を身につけてしまうからです。

もともと悪いことだと思う部分が弱いのですからそう簡単には治りません。中野氏の本でも治療についてはこれからの研究課題となっています。

サイコパス的素質が必要なときもある?

直すのが難しいのならどうすればサイコパスを社会に役立てることができるのか。についても提言がなされています。社会や会社を発展させるときには時としてサイコパスの素質を持った人が必要な場合もあります。感情に流されず、合理的な判断が必要な場合があるからです。仕事によってもそのような素質が必要なものはあるでしょう。もちろんサイコパスと社会の共存はまだまだ研究途上にあります。

あくまでも精神的な分類上の名前です

精神的なもの心理的なものを話題にする場合注意しなければいけないことがあります。サイコパスというのは心理学者、精神科の人たちが特定の傾向のある人をまとめて呼ぶための名前にすぎないのです。病気や疾患が存在するのとはまた別の話です。脳の仕組みについてもこういう傾向がある。というだけで、ここからここまでがサイコパスという定義ができるわけではありません。

名前を作って分類してしまうと普通の人とは違う特殊な人が存在しているかのように錯覚しがちです。でもそうじゃないんです。さまざまな人がいる中でそういう傾向の強い人がいる。ということなんですね。GID、ADHDと似たようなものです。もちろんそういう傾向のある人をどう扱えばいいのか。どう接すればいいのか。というのを考える上では分類は意味を持ちます。

しかし分類に名前が作られると、ちょっと似ているだけで決めつけたり思い込んでしまいがちです。それによる弊害もあるのですが、この本の趣旨ではないので書くのをやめておきます。

あくまでも「心理学者がそのように分類している」というだけの話です。

まだまだ研究途上ですが話題としては面白い

自然科学の分野から見ると心理学や精神科の人の言ってることは胡散臭いのもあります。でもこの本はなかなかおもしろく読めました。こういう研究をしてる人もいるんだな。サイコパスとはどんなものなのかをお手軽に知るにはちょうどいいと思います。

この本には曖昧な部分や断定を避けている部分があります。研究途上の分野であること、倫理的に難しい部分があるので断定的に書くのは難しいと思います。その点は評価できます。むしろ言い切る研究者のほうが怪しいです。科学者とは本来慎重な人種なんですよ。

この本を読むと少なくとも世の中には罪悪感を感じにくい人はいる。人の痛みがわかりにくい人はいる。その人にはどんな傾向があるのか。ということを知る手がかりになりそうです。そんな人とどうつきあえばいいのか手がかりになるのではないか。と考えさせてくれます。

 

 


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