大企業のトップが他人のふりして現場に潜入。自分の会社の知らない部分を発見する。作り話のようなことをやってしまうテレビ番組があります。
それがNHKでやってる「ボス潜入」。これがなかなか面白いんですよ。企業やお店で働いてる人なら「ある、ある」という場面がたくさん出てきます。会社のトップの人も知らないことが現場で起きていたり、現場の人が気が付かない部分を別の視点で発見したり。あらためて企業って知らないことだらけだなと思わせてくれます。
企業で働いてる人なら楽しめるし、ためになる番組だと思うので紹介します。
覆面リサーチ・ボス潜入ってどういう番組?
番組に登場するのは大企業や有名企業。だから何回か見れば「この会社知ってる!」と思うものが出てきます。過去にも寝具の”京都西川”、お笑いの”吉本新喜劇”、関東の高級スーパー”紀の伊国屋”などが登場。食品会社、鉄道会社、保育介護会社と様々なジャンルの企業が登場しました。
役員クラスの人が正体を偽って現場に潜入。異業種の研修生や失業オジサンの仕事体験という別の番組を設定。架空の番組を収録するということにして、現場の人が役員に仕事を教えるという内容です。現場の人は役員だとは知りません。中には「この人うちの会社の役員に似てる」と思う人もいるようですが。普段の態度とは全然違うので、なかなかわからないみたいです。一通り現場を体験したあとは日を改めて正体を明かす。というドッキリ番組の一種。だけど番組の趣旨は驚かすことではなくて、生の現場を体験すること。番組を見ていると自分の会社でも起きているようなことがテレビの中でも起きてます。これが妙に現場の人に親近感を覚えてしまうんですね。
もともとこの番組はイギリスで放送していた「Undercover Boss」という番組。同じ内容の番組を舞台を日本に移して制作したものです。日本人なら”ボス”って言葉はあまり使わないですよね。そんな言葉が番組タイトルになってるのもイギリス発祥のせいなんでしょうね。現在(2017年2月)は第2シーズンがNHKのBSプレミアムで放送中です。
番組HPには
日頃あまり目立たない現場の従業員こそヒーローになる、痛快ファクチュアル・エンターテインメント
という安っぽい宣伝文句が付いてます。でも企業や組織で働く人なら共感できる部分や気付かされる分がある奥の深い番組です。
老舗スーパーの副社長が店舗で現場実習
たとえば2月の放送では老舗スーパーが登場しました。「紀の伊国屋」というスーパーマーケットです。主に関東で展開してるお店ですね。関西在住の僕は知らない会社でした。でも妻は知ってました。日本初のスーパーマーケットらしいです。どちらかというと高級志向のお店のようです。ちなみに本屋の紀國屋書店とは関係ないです。
そんな会社の副社長がいくつかの店舗で実際に働くというもの。従業員には「失業中の中年男性の職業体験に密着取材する」という内容で知らされているようです。いくつかの店舗でそれぞれ違う内容の仕事を体験してました。
会社役員ともなると現場を離れて年数がたつので今現場で起きてることがわからないと思うんですよね。特に他の企業から転職した人だとなおさらわからないです。他の会社でやってたことが、この会社ではやってないとか。その逆とかありますから。しかもそれなりに高い役職で転職してしまうと転職先の現場のことは余計にわかりません。僕は会社役員経験はありません。でも転職経験や管理職待遇の経験があるので仕事内容把握の難しさはなんとなくわかります。現場の立場もよくわかります。
印象的だった内容をいくつか紹介します。
ある店舗の現場責任者は朝5:30に出勤してました。他の店員はまだ来ていません。なぜかというと野菜なんかを入れている冷蔵機能のついた陳列棚が水漏れしてました。毎朝水を拭いて掃除しないといけないんです。商品の陳列が始まるまでには掃除を終わらせないといけない。だから現場責任者が早出してやったるんです。修理してほしいと会社に言ったそうですが実現されてないとか。でも副社長はそのことを知らない。組織のどこかで報告が止まってるんでしょうね。あるいは、報告は来てるけど却下したとか。どこの会社でも設備や施設の修繕は課題になります。報告しても会社はなかなか認めてもらえません。予算や時間の都合ですぐには認められないという事情もあります。現場の切実さが伝わってないこともあります。「現場の努力で対応できるなら現場でなんとかしろ」ということもあります。この問題は業種を問わずにどの会社や組織でもあると思います。たぶんあなたの会社でも起きてるんじゃないでしょうか。
幸いにも番組で取り上げた個所については会社に修理を認めてもらえたようです。テレビに出てしまったら放置するわけにはいきませんよね。現場の方も早出しなくていいようになったようです。
別の店では、せっかく冷凍ではない生の素材を使って魚のフライを作ってるのに、それがお客さんに伝わってませんでした。現場の人は揚げたてを強調していました。でも、素材が新鮮だとはどこにも書かれていないしお客さんには知らされていない。普通の総菜として売られているんですね。現場ではあたりまえにやっていたから、改めて宣伝する発想がなかったようです。番組に出ていたスーパーではさっそく生の素材を使ってること強調するPOPを作成したようです。
昔から現場にいる人にとっては当たり前でも他の職場や他の会社から来た人なら「これは普通じゃない」と思うこともあります。現場の人ではなかなか気が付かないこともあるので、責任者クラスの人はもう一度自分の職場を見て、当たり前だと思ってやり過ごしているものはないか。先入観を持たずに普段の仕事を見直すのもいいかもしれませんね。
また、経営の方針が店舗や組織の末端までいきわたってない問題もあるようです。組織運営の難しさなんでしょう。命令が下まで届いているか確認することも必要なんですね。一か所の問題点は他の部署でも起きてる可能性があります。情報を他の店舗や部署にも知らせるのも必要です。「水平展開」といいます。それができる組織はトラブルが起きにくいです。
他人事じゃないかも
こういう番組がBSでしか見られないのは残念ですね。いつか地上波でもやってほしい。企業や組織で働く人に見てほしいです。特に、会社の上層部や部下を持ってる人は絶対見るべきです。よその会社だと思うかもしれませんが、何回か見れば同じことは絶対あなたの会社でも起きていますよ。会社や組織の問題点ってどこも似たようなものなんだな。って思います。
組織の下で働く人にとっても見る価値はあります。普段はほかの会社ではどうやって仕事してるかわからないですよね。テレビでわかる範囲ではあるけど「あの会社ではそんなことしてるんだ」と参考になる部分があります。気づかされることの多い番組でした。
覆面リサーチ ボス潜入
NHKBSプレミアム 本放送 毎週金曜日 午後10:00~11:00
再放送 毎週日曜日 午前11:00~12:00
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