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大河ドラマから考える・成功体験を勘違いする作り手と消費者のギャップ

2017年大河ドラマは「おんな城主 直虎」です。最近の大河ドラマは女性を主人公にすることが多いですね。

女性を主人公にしたドラマでも八重の桜、花燃ゆは視聴率的には惨敗しました。「女性を主人公にすれば視聴率がいい」という神話は崩れました。失敗の理由はテレビドラマ特有の話ではないように思えます。

ところが、他の業界でも似たような失敗はあります。せっかく作ったけどヒットしない、売れないってことはありますよね。理由はいくつもあります。でも、そもそもコンセプトが間違ってた。という場合もあります。

この記事では大河ドラマを題材に作り手とユーザーの意識のギャップについて考えてみたいと思います。

 

目次

過去の成功パターンの形だけをなぞってもだめ

原作もよくできてました

 

大河ドラマ人気をを立て直したといわれる「利家とまつ」「巧妙が辻」は女性が主役か主役クラスの存在感でした。「篤姫」は視聴率絶好調でした。「江~姫たちの戦国~」は酷評する意見もありましたが視聴率は悪くはありません。

歴史ファンに人気の高い戦国時代や幕末。まつ、千代、篤姫、江は歴史ファンなら名前の知ってる有名人でした。

だから大河ドラマの主な視聴者である男性ファンでも違和感なく見ることができました。女性層と大河ドラマファンの両方を引き込めたから視聴率が上がったんですね。

でも女性主人公の「八重の桜」、「花燃ゆ」は視聴率的には惨敗でした。

コンセプトが定まらないまま終わった

なぜでしょうか?女性を主人公にすれば視聴率は上がるはずでは?

過去の成功パターンをまねてるようで実はなぜヒットした理由がわかっていないように思えます。
主人公が女性だからといううわべの理由だけで選んで、それ以外の部分をおろそかにすると失敗するという見本ですね。

 

篤姫、利家とまつ、巧妙が辻がヒットしたのは何故か?

知られざる功績を広めた意義は大きい

篤姫、まつ、千代は単に女だからという理由だけで受けたんじゃないないと思うんですね。

主人公が成長し、ふりかかる問題や、大物と対峙したときどうするのか。難題をきりぬけ、成功や偉業をなしとげる。という大河ドラマとしての面白さはしっかり備えていました。女性だから男が同じことを成し遂げたときよりインパクトが強い、というのもあるでしょう。ヒロインには世の中で男たちと互角に渡り合って生きていく。そういうスケールの大きさがあったと思うんです。

従来の大河ドラマファンにプラスして新しいファンを獲得したから視聴率アップにつながったんじゃないでしょうか。

 

プラスマイナス=マイナスでは意味がない

女性層だけを意識した大河ドラマでは、女性層は取り込めるかもしれません。

でも従来の大河ドラマファンは離れてしまいます。それでプラスマイナス0になるならまだいいのですが。視聴率が悪いということは、獲得したファンよりも離れたファンの方が多いということです。

プラスマイナスがマイナスになってしまったんですね。

製作者も過去の作品がなぜ成功したか理解できていないんじゃないでしょうか。それを「世の中の変化」で逃げては成長がありません。

マーケティングやリサーチができていない。勝手な思い込みで作ってるだけ。それで失敗したら普通の企業なら死活問題です。でもテレビ業界は物を売ってるわけではないのでそれでもいいのかもしれません。ましてNHKは受信料で成り立ってる局です。成果を気にする必要はないのかもしれませんね。うらやましい業界です。

 

テレビ業界だけではない、需要を読めない作り手たち

実はこの手の失敗は他の業界でもよくあります。例として車を取り上げてみます。

車をモデルチェジするとき女性向けに作り変えることがあります。世の中の一般論では「若者は車を買わない」「女性のドライバーが増えてる」と言われています。だから女性向きの車にしようってコンセプトを変えたとします。

そのコンセプトは悪くないです。それなら女性向きの新しい車種を作るべきなんです。

でもメインのユーザーが男性だった車種を女性向きに作り変えてしまう。その結果、モデルチェンジしたのに期待したほど売れてない。なんてことが起きるんです。

なぜ期待したほど売れてないかわかりますよね?

従来のユーザーに新しいユーザーが加われば販売台数は増えます。でも新しいユーザーが増えても、それ以上に従来のユーザーが減ったらどうなるでしょうか?販売台数が減りますよね。

ヴィッツなんかはその悪循環にはまりかけていました。さすがにメーカーも気が付いたのか路線修して男性向けに売り込みをかけてます。

 

逆に期待を裏切ってるのがスズキのスペーシア。

モデルチェンジで更にタントに似てる

 

ハイトワゴンと呼ばれる軽自動車(競合車はタント、N-BOXなど)は高収入でない(若いことが多い)お父さんがファミリーカーとして買ったり、大型車に乗ってた人が高齢になったので買いかえる。という需要が多いそうです。

「本当はもっと大きい車が欲しいけど、理由があって軽自動車ですませてる」って人向けの車なんですね。

でも、子育てママのための車として売ってしまうと販売台数が伸びないのは当然です。

車がかわいいデザイン。堀北真希がCM。そんなことしたら世の中のお父さんは買えませんよね。もちろん女性向きの車種があっていいんです。子育てママにウケる車があるのはいいことです。でもそれなら別の車種として作った方がいいと思うんですよね。メーカーは「男ならカスタム買え」っていうのでしょうけど、ファミリーカーが欲しいのに何で燃費の悪いターボ車を買う必要があるんでしょうか。「それならタントでいいよね」って思いますよね。それに見た目もタントのパクリなので無理にスペーシアにする必要もないです。だからスペーシアはタントの敵ではありません。

 

無駄な部分にこだわる制作者

視聴率を気にしすぎるのも問題ですが

大河ドラマに話を戻します。

NHK大河ドラマは民放とは違うので視聴率が全てじゃありません。別に視聴率を気にしすぎる必要はないのでは?って思います。
僕も「八重の桜」の前半は楽しめました。それまで会津の側から見た幕末のドラマはなかったので興味深かったです。松平容保のおかれた立場には泣けてきましたね。

みどころは八重の鉄砲ではなくて松平容保の苦悩?

 

「花燃ゆ」も長州藩の側から見た幕末史を期待していました。でも、本当に杉家の周辺だけで起きてるホームドラマでした。幕末を舞台にしながらあそこまで歴史をないがしろにした大河ドラマも珍しいです。明らかに顧客を間違えてる。

視聴率にとらわれずに知られざる功績を世の中に伝えるドラマがあってもいいと思います。それができるのは広告収入を気にしなくていいNHKならではの役目だと思います。

でも、八重、美和には大河ドラマの主役をできるほどの功績やドラマがないんですね。僕が問題にしたいのは視聴率が低いことではなく、アピールできるものがないのに無理やり視聴率目当てで番組を作ること。だから伝わるものがないつまらないドラマになってしまう。

確かに新島八重は多少のエピソードはあるし、朝ドラなら十分ヒロインがつとまったでしょう。さすがに美和本人はエピソードが少なすぎますよ。大河の主人公は無理だと素人でもわかります。民法なら打ち切りになってますね。長州を舞台にしたいならほかにも有名人はいるのに。なんででしょうね。長州には有名人が多いです。吉田松陰、高杉晋作、桂小五郎。たしかに活躍した期間は短いので大河ドラマはむつかしいかもしれません。

活躍機関の短さで言うなら真田信繁も似たようなものです。大阪の陣しか功績のない真田信繁で一年間のドラマが作れるなら、他の歴史上の人物でも作れると思うんです。井伊直虎だって出自や背景がユニークなだけで自身のエピソードはほどんとないです。

ドラマは面白いけど肝心の合戦シーンが盛り上がらない

 

もちろん信繁の場合は「真田幸村」の知名度と人気で注目を集められます。真田幸村の話は江戸時代の軍記物(合戦を題材にした物語)や講談でおおよその話が作られ明治以降の真田ブームで誇張されて伝わりました。実際よりも凄い人になってる可能性はあります。でも歴史って結局は後世の人が作ったものだから、そういうこともあるのでしょう。

2017年の大河ドラマはほぼ無名な井伊直虎。しかも本人のエピソードはほとんどないです。しかし直虎を取り巻く人々には興味深いものが多いです。大国に翻弄される小さな勢力の生き残り作戦は歴史ドラマファンも好きな要素。今川、武田、德川といったメジャーな大名も関係してくるし。政治的駆け引きもうまく絡めながら家中のもめごとも同時進行すれば面白いんじゃないでしょうか。

子役がよかった

「おんな城主直虎」は放送始まって一か月がたちました。視聴率16~17%、とりあえず出だしは悪くないですね。個人的には子役の期間がもっと長くてもいいと思います。直虎のエピソードは作らないといけませんからストーリー上は展開を急がないといけない理由はないはずです。テレビ局は有名俳優を早く出せば視聴率が上がると思ってるようです。これから大人バージョンになって展開が朝ドラっぽくなりそうです。でも、いくら人気俳優を使ってもストーリがダメならどうしようもないです。製作陣には頑張って欲しいです。

 

小手先のウケ狙いは消費者にもバレます

どうしても女性を意識した歴史ドラマを作るなら大河ドラマとは別に作ってもいいと思うんですよね。

韓国の歴史ドラマって美男美女(でも子役は可愛くない、なぜだろう)だけが特徴じゃないと思います。歴史の記録や当時の習慣と違う部分が多いです。現代人にウケるようにかなり変えてます。しかもやたらと恋愛要素が入る、衣装やセットが派手で奇麗すぎる、宮中なのにしきたり無視して自由奔放・出入りが簡単、主要な女性キャラは歳をとらない(朝ドラや大河もその傾向がありますが)。と、硬派な歴史ファンなら怒りそうな要素が多いです。でも、それなりに需要があるのは割り切って女性や若年層向けに作ってるせいかもしれません。

歴史の再現度はいい加減だがドラマは面白い

 

日本にもそういう気楽に楽しめる歴史ドラマがあっていいのかなと思います。そういうものだとわかったうえで、気軽に楽しめる歴史ドラマがあってもいいと思うんですね。大河ドラマは本格的な歴史ドラマが好きな人向けに作ればいいんです。すでに固定ファンのいる大河ドラマで既存のファンの求めていない女性向け要素だけで勝負してもうまくいきませんよ。

つまり大河ドラマの失敗からわかるのは。

単純にウケそうだからという理由だけで小手先の路線変更してもだめ。
中途半端はしない方がまし。
浅はかなウケねらいは消費者に見透かされて相手にされない。
ターゲットにしたい客層を決めて土台からその人たち向けのものを用意した方がいい。

という、民間企業で商品開発してる人なら知ってる(はずの)結論になるわけです。

大河ドラマの失敗はどの分野でも通用する教訓なんだと思うのです。

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