日本はキャッシュレス化が遅れているといいます。
何故でしょうか?経済産業省がまとめたキャッシュレスの資料を入手したのでそれをもとに私の考えを述べてみたいと思います。
キャッシュレス決済の定義
とその前にキャッシュレス決済とは何なのかについてまとめておきましょう。
キャッシュレスとは現金「硬貨や紙幣」と使わなくても決済できる状態を「キャッシュレス決済」といいます。
だから
クレジットカード
デビットカード
プリペイドカード
もキャッシュレス決済。
それに加えて今話題になってるのはスマートフォンを使った決済「モバイルウォレット」ですね。
日本は本当にキャッシュレスが遅れているのか?
世間ではよく日本はキャッシュレスが遅れていると言われます。本当なのでしょうか?本当だとしてもどのていど遅れているのでしょうか?
経済産業省の資料「キャッシュレスビジョン」によると、2015年時点のキャッシュレス化の比率はこのようになってます。
韓国 中国 カナダ イギリス オーストラリア スウェーデン アメリカ フランス インド 日本 ドイツ |
89.1% 60.0% 55.4% 54.9% 51.0% 48.6% 45.0% 39.1% 38.4% 18.4% 14.9% |
データの出どこは世界銀行の資料かららしいです。中国だけはBetter Than Cash Allianceという団体のデータから。キャッシュレスを推進している国際団体のようです。
この資料を見る限りでは、
一番キャッシュレス化が進んでいたのは韓国でした。
その次が中国。あの広大な国で60%は意外です。この数字に農村部や新疆ウイグル自治区やチベット自治区は入っているのか気になるところです。でも都市部ではほぼキャッシュレス化が進んでいるとも言われるのでとりあえず信用することにしましょう。
欧米諸国は50%前後。
インドでも38.4%ありますね。
日本は18.4%と比較した中では10番目。下から2番めに低い。
日本よりも低かったのがドイツの14.9%。ドイツ人は堅実なのであまりキャッシュレスが普及していないみたいです。
確かに日本はあまりキャッシュレス化が進んでいない。
これを見ると確かにIT技術の進んだ先進国はキャッシュレス化が進む傾向にあるのかもしれませんが。キャッシュレス化が進む=先進国ではなさそうです。
諸外国でキャッシュレス化が進む理由
諸外国でキャッシュレス化が進む理由はいくつかあります。
現金の信頼性が低い
偽札が出回ると現金の信頼性が落ちます。業者も損をしたくないのでできれば偽札が混ざる可能性のある現金決済はやりたくない。
これが一番大きいです。中国や韓国でキャッシュレス化が進んだのはこの理由です。
脱税対策
韓国は脱税の打開策として政府主導でクレジットカードの利用を進めました。キャッシュレスは履歴がすべて残るのでごまかしがきかないのでしょうね。
現金は輸送が大変
スウェーデンなどは冬場に現金の輸送が大変なためキャッシュレスを進めたそうです。中国も国土が広いので事情は似ています。現金を輸送するとコストがかかりますからね。
犯罪防止
現金を輸送すると現金輸送車が襲われる。現金を保管している銀行や店舗が襲われる。ATMが壊される。と現金を保管しておくと必ずセキュリティーが問題になります。治安の不安な国ではできるだけ一箇所に大量のお金は置いておきたくない。という事情があるようです。
日本でキャッシュレスが進まない理由
日本でキャッシュレス化が進まない理由は外国の逆を考えればわかります。
現金の信頼性が高い
日本でキャッシュレス化が進まない最も大きな理由はこれ。なにしろ日本では偽札が珍しい。日本人で「自分の持っているお金は偽札じゃないか?」と不安を持ちながら使っている人はほとんどいないでしょう。日本の紙幣の偽造防止技術は世界一ですし、あえて危険を犯して偽札を作ろうという人も生粋の日本人の中にはほとんどいないです。
治安がいい
かつては銀行強盗や現金盗難事件が話題になったこともありました。でも最近では銀行強盗のニュースは聞いたことがありません。
ATMが壊されることも殆どありません。一時期ATMが重機で破壊されたことがありました。でもあれは外国人犯罪集団とそれを真似した人によるものでした。でも最近では聞きません。
店舗のPOSが正確で速い
意外な気もしますが経済産業省の資料によると日本の店舗のPOS(レジ)の処理は高速で正確なのだそうです。そのため店頭での現金取扱の煩雑さが少ないのだそうです。外国のPOSってよく故障するんでしょうか?
それに日本のスーパーのPOSってすごく複雑な画面になってます。訓練しないと使いこなせませんよね。コンビニで外国の人がレジの対応しているのを見ることがありますが大変そうです。レジ係が煩雑な作業をこなせるのも日本人の器用さなのかもしれません。
消費者の不安
クレジットカードが導入されたときもありましたが。現金をもたないことへの消費者の不安は大きいようです。
お金が見えないので使いすぎてしまうのではないか?
金銭感覚が麻痺するのではないか?
個人情報がもれるのではないか?
勝手に使われてしまうのではないか?
などの不安があります。キャッシュレス化の不安は男性よりも女性。低年齢層よりも高齢者に不安を感じる人が多いようです。
事実、7payでもあったように利用者が知らない間に勝手にお金を使ったことになっていた。という事件が起きています。
現金を持っていなくても犯罪に巻き込まれるのです。
いえ日本では犯罪に合う確率は現金よりもキャッシュレスの方が高い。しかも現金なら手元にあった分しか奪われませんが、キャッシュレスは一度不正利用されたときの被害が大きい。キャッシュレスはリスクが高いのです。
導入コストが高い
キャッシュレス化を進めようと思えば当然、設備投資が必要です。例えばクレジットカードを導入すればカード会社と契約して読み取り機を導入しなければいけません。売上からいくらかのマージンが引かれます。その費用が小売店では意外と痛い出費です。
キャッシュレス会社が多すぎる
これは日本独特の問題点。
経済産業省の資料によると日本人は平均8枚のクレジットカードを持っています。シンガポールの10枚に続いて多い。欧米諸国はせいぜい2枚です。アメリカ、中国、韓国でも4枚。
日本はキャッシュレス化には慎重な割にカードを何枚も持っている。でもカードの種類だけならまだいいほうです。クレジットカードはたいていVISAかマスターカードに対応しているから、大抵のお店で仕えるからです。
ところがモバイルウォレットはそうはいきません。現在日本ではauPay、d払い、楽天ペイ、Origami Pay、PayPay、メルペイ、LINE Pay、pring、Kyashなど多くのサービスがあります。
利用者としては一つのサービスを使ったとしても使える店が限られているのであまりメリットを感じません。利用する店が導入してればいいですが、そうでなければキャッシュレスサービスを利用するメリットがありません。
導入する店舗も一つのサービスを導入しただけでは利用できる顧客が限られてしまう。そこでいくつものサービスと契約しなければいけません。それだけコストがかかります。
キャッシュレス化はできるだけ規格を統一しなければ普及しないでしょう。
日本ではキャッシュレス化はあまりなじまない
おそらく今の規格が乱立した状態では日本のキャッシュレス化は一時的なブームで終わってしまうでしょう。
最初はさまざまなポイントや特典につられて利用する人が増えるかもしれません。でも企業も永久に特典をつけられるわけではありません。特典がなくなれば顧客は他のサービスに流れていきます。
どうしてもキャッシュレス化を進めたければ規格を統一すること。できるだけサービスの種類を減らすことです。
イコカやスイカのように電車やバスの決済なら利用する地域や交通機関はだいたい決まっているので規格が乱立していてもあまり不便はないかもしれません。でも買い物はそうはいきません。
煽りは激しくなる一方ですが
今日本では
世界はキャッシュレス化に向かってる。
日本は遅れている。
キャッシュレスがお得。
現金払いは損。
などとテレビや新聞、雑誌、ネット上ではキャッシュレス化を煽る報道があふれています。それは消費者にキャッシュレス化を進めて企業のサービスに加入させようという煽り・煽動です。
規格が乱立している分、競争も煽りも激しくなります。その結果が7payのようにセキュリティーがてきとうでも儲ければいいといういいかげんなキャッシュレスサービスの登場になります。
しばらく様子を見るのがいい
現状のままだといずれ日本のキャッシュレスブームは終わるでしょう。
今ブームだからといって飛びつけば実験台にされるだけです。あとになってセキュリティーに問題が見つかりました、サービス終了します。なんて笑えないことにもなりかねません。
もちろん利便性の高いキャッシュレスサービスを使いたいと思うこともあるでしょう。賢い消費者ならサービス乱立状態の今はしばらく様子を見たほうがいいです。
そして生き残った信頼性の高いサービスを利用すればいいのです。
企業やマスコミの煽りに惑わされてはいけませんよ。
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