日産のゴーン会長が逮捕されるという衝撃的なニュースが飛び込んできました。
役員報酬を50億円も少なく報告したというのです。
ゴーン社長といえば低迷していた日産を立て直したカリスマ的経営者として有名です。
いったい何が問題だったのでしょうか?報道されている内容から調べてみました。
ゴーン社長は何の罪で逮捕されたのか?
今回ゴーン社長が捕まった理由は
「金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)」という罪です。
ゴーン氏は2011年3月から2015年3月期の役員報酬が
99億9800万円だったのに
49億8700万円として報告しました。
約50億1100万円も少なく報告したのです。
5年間で約100億円もの報酬をもらっていたとは驚きですが。それだけもらっていながらも半分しか報告していなかったのです。
その後の調査でさらに30億円少なく申告していた事がわかりました。80億円もごまかしていたんですね。
有価証券報告書の虚偽記載とは?
今回ゴーン氏が捕まった金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)とはいったいどんな罪なのでしょうか?
会社役員は役員報酬を有価証券報告書に載せなさい。という法律があります。
2010年3月に改正された法律です。
この法律では年間1億円以上受け取っている会社役員は、役員の名前と金額を有価証券報告書に載せなくていはいけません。
有価証券報告書とは投資家が投資をするかしないか判断するときに見る資料です。
どんな歴史をもつ会社なのか。
何をしている会社なのか。
従業員は何人いるのか。
どんな設備をもっているのか。
会社の財政事情。
経営方針。
業績。
など。会社に対するあらゆる情報が載っています。
投資家や取引先がこの情報を見てその会社に投資したり、取引するかどうかを決める材料のひとつにするのです。
2010年までは役員報酬の合計額しか報告の義務はありませんでした。
2008年リーマンショック以降、高額な役員報酬をうけとっている経営者への批判が欧米で強まりまりました。そこで日本でも役員報酬を公開するように義務付けられたのです。
有価証券報告書の記載が少ないからといって脱税になるわけではありません。所得の報告をちゃんとしていれば問題はないはずです。でも高額報酬で有名な経営者の所得と有価証券の記載が違っていれば役所も気づくはず。所得をごまかしていた可能性もありますね。
ゴーン氏は投資家の批判をかわすため報酬を少なく報告したのではないかといわれます。役員報酬が高いからといって直ちに会社の業績が悪くなるわけではありません。しかし投資家や取引先がその会社を知るための「有価証券報告書」にウソが書かれていたとなれば、その会社自体も信用できなくなります。
しかもゴーン社長自らがウソを言っていたとなれば「一部の社員が不正を行いました」どころの問題ではありません。会社組織そのものが不正を行っていると思われても仕方ありません。
しかもゴーン氏の容疑はそれだけではありません。
「私的な目的で日産の投資資金を支出」
「私的な目的で日産の経費を支出」
などの容疑がかかっています。
会社の資金を個人的に使ったとなれば大きな問題です。
有価証券報告書の記載が少ないからといってただちに脱税になるわけではありません。所得の報告をちゃんとしていれば問題はないはずです。
でも高額報酬で有名な経営者の所得と有価証券の記載が違っていれば役所も気づくはず。所得をごまかしていた可能性もありますね。
今後の捜査次第では罪状がさらに詳しく明らかになることでしょう。
カルロス・ゴーン氏とはどんな人?
そもそもゴーン氏とはどんな人なんでしょうか?フランスのルノーから来た人くらいは知ってますが。詳しく調べてみました。
1954年。ブラジル生まれ。
高校までは祖父の母国レバノンで暮らしました。
その後、フランスの国立高等鉱業学校に入学。
1978年。24歳。高等鉱業学校卒業。
フランス・ミシュランに入社。
1996年。フランス・ルノーに移籍。
12月。副社長に就任。
1999年。日産COO(最高執行責任者)に就任。
日産の再建計画(日産リバイバルプラン)を発表
2000年。日産社長、CEO(最高経営背金者)に就任。
2002年。日産の黒字化達成。大胆なリストラ、資産売却などなどで計画を1年前倒して達成。
2005年。ルノー社長に就任。
日産とルノーの社長を兼務します。
2010年。日産・ルノーがドイツ・ダイムラーと提携。
2016年。ルノー・日産・三菱自連合が発足。三菱自動車の会長に就任。
三菱自工の燃費偽装が発覚して日産の傘下に。
2017年。日産社長を退任。会長に就任。
逮捕前の最終的な地位
日産自動車 会長(報酬7億円)
ルノー 会長兼最高経営責任者(CEO)(報酬9億円)
三菱自動車 会長(報酬2億円)
三つの自動車会社の事実上のトップを掛け持ちするというきわめて責任の重い地位にいました。三者からうけとる報酬は合計で18億円。2017年の一年でこれだけの報酬を手にしました。
日本人経営者にはない大胆さでなかば強引に日産のリストラを勧め。会社を立て直してカリスマ的な経営者と称賛されました。
しかしその一方では高額な報酬が問題となり。日産社内でも「greedy(欲張り)」と呼ばれることもあったとか。理屈は正しくても結局はお金の人。だといわれます。
会社の業績が悪い時期でも高額報酬を受け取り、2017年の日産の不祥事では自ら会見に出ることはなく、部下に説明を押し付けたといわれます。
なぜバレた?
今回ゴーン氏が逮捕されたのは日産の内部告発があったから。東京地検と日産との間で司法取引が行われています。
ゴーン氏は個人で不正をおこなっていたのではありません。日産自動車取締役のグレッグ・ケリー氏も協力したとして東京地検に逮捕されました。ケリー氏はゴーン氏が招いた元弁護士。二人で共謀して役員報酬を少なく報告していたようです。
とはいっても役員報酬は会社が報告するもの。日産自動車自身にも罪は問われます。
司法取引でゴーン氏の取り調べに協力するかわりに日産自動車への罪は軽くすることになったようです。
日本では2018年から司法取引導入された司法取引としては2例目の適用になります。
ゴーン氏は解任?
日産自動車は11月22日の取締役会議でゴーン氏とグレッグ氏の解任を提案します。取締役会議ではおそらく解任が決まるでしょう。
日産にはゴーン氏が招いたルノー関係者が多くいます。しかしゴーン氏の後任がつとまるほどの人物はおらず、日産とルノーの関係も影響しそうです。
現在はルノーが日産に44%出資しています。しかしルノー・日産・三菱自動車の提携を強力に勧めて来たゴーン氏がいなくなることで、日産とルノー提携が弱まることもありそうです。
今回日産が告発した背景には単なる虚偽記載や資金流用だけの問題だけではなさそうです。
日産とルノーをめぐる主導権争いも背景にあるようです。
ゴーン氏で変わる日産とルノーの関係
日産自動車は業績不振に苦しみルノーの傘下に入りました。ルノーのもとで再建に取り組みみごと立ち直りました。ゴーン氏の業績なのは間違いありません。
しかし近年では逆にルノーの販売台数が落ち込み。グループ内で日産自動車の影響力が大きくなっていました。
世界的に見れば販売台数や技術力は日産がルノーよりも上になってしまったのです。
2017年の自動車販売台数。
(1)フォルクスワーゲングループ 1074万台
アウディ、ポルシェ、ランボルギーニ、ベントレー、ブガッティ、スカニア他含む
(2)ルノー・日産グループ 1060万台
日産 581万台
ルノー 376万台
三菱自動車 103万台
(3)トヨタグループ 938万台
日野自動車 18万台
ダイハツ 81万台
これをみると販売台数だけならルノー・日産グループの中心は日産といえるでしょう。
提携解消で困るのはフランス・ルノー?
フランス政府はフランス国内の雇用を増やしフランス自動車産業を強化しようと、ルノーと日産の経営統合を考えていました。つまり、ルノーと日産は一つの会社になるということです。ブランドは残るかもしれませんが、経営上は同じ会社ということです。
この問題はフランスでも大きく取り上げられました。単にフランスを代表する経営者が逮捕されるという問題だけではありません。フランスの自動車産業にも関わる問題と考えているようです。
フランスのジャーナリストもテレビのインタビューでこのように答えていました。
日産にとってのルノーよりも、ルノーにとっての日産のほうが大きい。日産は技術開発ではルノーよりも高い成果を出しているからだ。と。
フランスの番組でも今後はルノーと日産の関係が維持できるのかが話し合われていました。
今後自動車社会はEV(電気自動車)化をはじめ大きな変化がおとずれるのは間違いありません。そこで技術的にも日産に期待するものはあったのでしょう。日産の販売台数が増えて、グループ内での稼ぎ頭になりつつあるのも、フランス政府が日産とルノーを経営統合しようと考える理由にありそうです。
しかし経営統合されてしまったら日産はルノーのいいなりになってしまいます。「ルノーに支配されるのではなく、独自路線を歩むべきだ」という意見が日産車内で出るのも無理はありません。
日産は立ち直ったとはいえ、ルノーとの提携を弱めてうまくやっていけるのかはわかりません。すでにコスト削減のため、日産・ルノーは部品の共有化を進めてきました。提携解消はいまさらできないでしょう。日産はいかにして独立性を保ちながら経営を安定させるか大きな問題を抱え込むことになりそうです。
ゴーン氏の取り調べだけでなく、今後の日産の動きにも注目が集まりそうです。
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