ヒ素というと毒物の代表みたいに思いますよね。過去の殺人事件でも使われていました。
豊洲の地下空間ににたまった水から微量のヒ素が見つかったと共産党が報告しました。
ヒ素ってどんな毒なんでしょうか。
基準値ってどのくらいなんでしょうか。
しかも食べ物にも入ってるようなんですよ。
ヒ素について調べてみました。
ヒ素って何
ヒ素(化学式:As)は金属の仲間です。ケイ素など非金属と金属の中間的な性質があります。半金属ともいいます。
ほとんどの生物に対して毒性があることが知られています。毒性があるという性質を利用して防腐剤、農薬に使われます。
電気を流したり流さなかったりコントロールすることができるので、ヒ化ガリウム(GaAs)半導体はLEDやトランジスタに使われます。
ヒ素単独で存在してるものを金属ヒ素といいます。金属ヒ素以外にもヒ素と他のものが反応してできたヒ素化合物があります。有機物と反応した有機ヒ素。無機物と反応した無機ヒ素があります。ヒ素を含むものは有毒なものが多いです。毒性が強いのは金属ヒ素、無機ヒ素だといわれています。
ヒ素の毒性、中毒症状は?
WHO(世界保健機構)の下部組織、IRAC(国際がん研究機関)により、発がん性物質(グループ1)に指定されています。グループ1とは「人体に対して発がん性が認められる」とIRACが判断した物質です。長期間ヒ素が体内に入るとガンの発生リスクが高くなるといわれています。
ヒ素を飲み込んだ場合は、吐き気、嘔吐、下痢、激しい腹痛がおこります。興奮状態になる人もいるといわれます。量が多いとショック症状が出て死亡することがあります。
長期間にわたって、ヒ素が体内に入った場合は、中毒症状が起こります。
剥離性の皮膚炎や重い色素沈着、骨髄障害、末梢性神経炎、黄疸、腎不全、脱毛などが起こります。
人体の中にもヒ素はあります
実は体内にもヒ素はあるんですね。とり過ぎると毒ですが、ないと生きていけない微量必須元素のひとつなんです。
でも、体の中では有機ヒ素化合物の形になってます。無機ヒ素がそのまま存在してるわけではありません。無機ヒ素に比べて有機ヒ素は毒性が低いといわれています。
海の食べ物にはヒ素が入ってる
ヒ素を含むものは海の生き物に多いですね。カキ、クルマエビなどの魚介類、ヒジキなどの海草類に多く含まれます。人間に必要なヒ素は魚介類・海藻類から取り入れているんですね。サプリメントなんかであえてヒ素をとる必要はありません。
米にも入ってる
米にもヒ素は入ってます。1kgあたり0.1~0.2mgのヒ素が入ってます。だから日本人は知らない間にヒ素を取り入れているんですね。これは土に含まれるヒ素を米が吸い込んでるからなんです。
スウェーデンでは米にヒ素が入ってるので幼児は毎日食べるべきでないと発表してます。
ヒ素はモミからと米の間の部分に含まれています。だから玄米にはヒ素が残ってますが、精米した白米には少ないんですね。
たとえば日本人におなじみの食材の中にもヒ素は入ってます。
食品中の総ヒ素量の値
名前 | 最小値 mg/kg |
最大値 mg/kg |
平均値 mg/kg |
玄米 | 0.03 | 0.8 | 0.23 |
精米 | 0.02 |
0.44 |
0.14 |
小麦 | 0.01以下 |
0.04 |
0.009 |
大豆 | 0.01以下 | 0.04 | 0.008 |
ひじき(乾物) | 28 | 160 | 93 |
ひじき(水で戻した物) | 2.1 | 20 | 6.0 |
こんぶ(乾物) | 25 | 110 | 53 |
わかめ(乾物) | 15 | 52 | 33 |
のり(乾物) | 13 | 51 | 25 |
米食の習慣がないスウェーデン人にとって米は得体のしれない食べ物です。人間はなじみのない物には大げさな拒否反応をします。これが主食の麦だったら規制はしなかったと思います。
でも現実に日本人は米を何千年も食べています。玄米の栄養分の高さは健康にもいいですし、日本人が白米を食べるようになったのは江戸時代からです。ヒ素を気にして米を食べないのはおかしな話ですね。
長寿国の日本人の主食が発がん性物質だから危険というのは考えすぎですよね。
ミネラルウォーターにも入ってる
ヒ素は地下の岩に含まれています。
だから長い年月地下を流れていた水にはヒ素がはいってることがあるんですね。
例えば市販のミネラルウォーターにも入ってるものがあります。
ボルビック 0.009mg/L
六甲のおいしい水 0.003mg/
エビアン 0.002mg/L
出典:ライフアップオンライン:支笏の秘水』と主な市販ミネラルウォーターの成分値
硬水の多い外国の水にはヒ素も多い傾向があるようですね。日本の水でも地層によっては吐いてることもあるようです。
日本のヒ素の規格値
清涼飲料水に含まれるヒ素の規格値は 0.05mg/L となっています。
厚生労働省:「食品、添加物等の規格基準」によると
水道水、地下水の規格値はもっと厳しくて 0.01mg/L です。
環境省:地下水の水質汚濁に係る環境基準について
普通報道で使われる基準値はこちらです。
なんで同じ水なのに規格が二つあるのかというと。
水道水は毎日飲んだり食べ物の調理に使う水だから基準が厳しい。
清涼飲料水はたまにしか飲まない水だから少し緩い。
というわけです。
だからボルビックのヒ素の値は0.009mg/Lということで、毎日飲む水としてはぎりぎりだけど。たまに飲む水なら問題ないってことです。
ちなみに規格値はこれを少しでも超えたら危険というわけではなくて、100倍の余裕をもって決めています。危険な値は動物実験をもとにして決めています。人間と動物では効果が違うこともあるので人間の場合は10倍にして計算。人間には個人差があるのでさらに10倍にして計算。その結果、本当に危険と思われる値よりも100倍の数字を基準にしているんですね。
参考文献:「ゼロリスク社会」の罠 「怖い」が判断を狂わせる (光文社新書)
だから一生毎日飲んで危険なヒ素の値は1mg/Lということになりますよね。
毒物といっても、量の問題なんです。すでに人体の中にもヒ素はあります。取りすぎると毒ですがゼロにすることはできないんです。確かにヒ素は怖い物質です。でも、取り過ぎなければ怖がることはないのですね。
豊洲からもヒ素が出ましたね
豊洲の地下水から出たヒ素の値は0.004mgLだそうです。
出典:毎日新聞:空洞の水に基準値の4割のヒ素 共産都議団
基準値の4割って。なんだか微妙ないいまわし。人によっては4倍と勘違いする人もいそう。多いんだぞということを強調したいんでしょうね。
ただ、今たまってる水は基準値内には収まってます。これがすぐに危ないとは言えません。
たしかにヒ素は雨水には含まれませんが。地下水には入ってることがあります。どこから来たのか詳しく調べないといけませんね。水源の水がもっと濃いと問題かもしれませんよ。
その後の調査で地下水からヒ素が0.019mg/kg検出されました。環境基準超えましたね。これは問題になるでしょう。でも、清涼飲料水の基準(0.05mg/kg)より低いという微妙な結果。溜まった地下水で食べ物を洗うわけじゃありませんが、毎日扱う水としてはふさわしくないですよね。
もっとも、豊洲の場合はすでに水質の問題じゃなくなってますよね。
以上、文也でした。
コメント