健康法には効果があるのかないのか怪しいものがあります。
昔は通用した健康法が現代では通用しなくなるものもあります。
医師の側から健康法について効果がある・ないと解説した本は何冊も出ています。
今回紹介する本もそのひとつ。
この本の著者の言葉を借りると
「私が読んできた膨大な医学論文」と
「予防医学・医療統計の分野で得た知識とデータをベースに」
本当に効く健康法を紹介する。
「ほかの書籍とはひとあじ違う内容」
ということです。
どんな最新の情報が紹介されているのでしょうか。
見てみましょう。
科学的根拠にもとづく健康法とは
この本に書かれている効果の怪しげな健康法の例を紹介します。
・週に一度は休肝日
普段大量にアルコールを飲んでいる人が、
周に1日だけアルコールを抜きにするという健康法。
アルコールは毒物なので大量に飲めば病気になります。
アルコールの量を減らすことが大切。
一日だけアルコールを抜いても他の日に大量に飲んでたら意味はないのです。
でも少しのアルコールを飲む人は、
糖尿病やメタボリックシンドロームになりにくいといわれます。
・脳を働かせるために糖をとるとよい
というのはお菓子メーカーが考えたキャッチフレーズ。
普通の食事をしていれば十分に脳に栄養がいきわたるので、
あえて糖分を取る必要はないということ。
糖尿病のリスクが高まるので、
頭をよくするために糖分を取る必要はない。
・コラーゲン、ヒアルロン酸、コンドロイチン。
これらの物質は食べても分解されます。
直接的には肌の状態がよくなったり、関節痛が治るわけではありません。
テレビや雑誌の健康法のなかにも、
効果の怪しいものがあることが分かります。
初めて健康本を手にとる人には、新鮮にうつるかもしれません。
知識が古い
ただ、残念なのは。
著者の知識が少々古いこと。
食物繊維の効果
人間はセルロースは消化できないので食物繊維をとると便秘になる、とあります。
食物繊維の成分はセルロース、難消化性デキストリン、βグルカン等。
現在ではセルロースは不溶性食物繊維。
難消化性デキストリン、βグルカン等は水溶性食物繊維です。
水溶性食物繊維は便秘や血糖値の上昇抑制に効果があるという研究結果もあります。
不溶性食物繊維も適度にとれば便通の軽減に役立てるとされています。
確かに重症の便秘や大腸がんの減少には効果がないといわれます。
だからといって食物繊維がまったく意味のないものと考えることはできません。
ストレスと病気
精神的ストレスは一切、寿命に影響しないと書いてます。
確かに適度な刺激=ストレスはあったほうが、認知症予防に繋がるといわれています。
でも、ストレスががんの発生にかかわると疑われる現在では。
精神的ストレスはいくら強くても関係ないというのは、古い考えかもしれませんね。
免疫とアレルギー
現代人は免疫力が高すぎてアレルギーになると書いてます。
アレルギー体質の人は風邪にかかりにくいのでしょうか。
免疫機構が異物を正常に判断する能力が衰え、
そのため起きるのがアレルギーだといわれています。
免疫力が高いとか低いとかの問題ではないと思うのですが。
この本は2015年8月出版になってます。
でも古い研究結果が根拠になっているのが残念です。
エビデンスを主張する医者の理解度は?
著者は健康法には「エビデンスのないものが多い」。
対して、著者の主張は「エビデンスを明示して」「エビデンスをもとに」
したものだと書いてます。
エビデンスとは科学的な根拠という意味です。
医学会で流行ってる言葉です。
科学的な根拠は大切です。
でも、エビデンスは同業者の中で語ればいいです。
この本はエビデンスがなにか知らない人が多い一般向けです。
自分はエビデンスがあるから正しいとか、
他の説はエビデンスがないから間違ってると言うのは。
読者には関係ないですよね。
効果があるかないかが問題なんですから。
科学的根拠が必要なら素直にそう言えばいいのに。
カタカナ言葉を使うと格好いい、頭がいいと勘違いしている人が多いのは困りものですね。
あと、著者の科学的知識の理解度に疑問が残ります。
例えば「体温を高くすると万病がなおる」という項目。
欧米人は日本人よりも体温が1℃くらい高いとされています。(中略)しかし日本人の平均寿命は世界一。体温が高い方が健康的だとはいえないのではないでしょうか。
と書いてます。
欧米と日本では死亡理由の内訳も違いますし、
体格、食生活、環境も違います。
欧米人と日本人では単純には比較できませんよね。
確かに体温と健康についてはまだ分からない部分があります。
だからといって見当違いの例を出して否定するのは、
科学的といえるのでしょうか。
条件がバラバラなのに数字だけ見て決め付けるのが、
エビデンスだと思ってる医者もいるのが現状。
科学の世界でも初心者が犯しやすい過ちなんですよ。
ちなみに科学の世界ではエビデンスという言葉は使いません。
当たり前ですから。
科学的な思考がどんなものなのか。
(本人も含めて)理解がひろまってないにもかかわらず、
自分の権威付けのために使ってる人が多い印象です。
僕は医学の専門家ではありませんが、
「エビデンス」を使う医者には胡散臭さを感じます。
まとめ
とはいっても、
この本で紹介している内容の大半はもっともだと思える内容です。
世間で広まっている健康法に効果が怪しいものがあるのは確かですし。
それを指摘しているのは評価できます。
ただ、
類似の本と比べて「ひとあじ違う」のかと聞かれると。
内容的にはあんまりかわらない印象です。
違うのは「エビデンス」が頻繁に出てくることですね。
文字が多く理屈っぽいので一般人には読みにくいかも。
自分は「エビデンス」が理解できると思ってる人は、
優越感をくすぐられる本かもしれませんよ。
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