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トヨタ自動車はなぜスズキ自動車と提携するのかその影響を考えてみる

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トヨタ自動車とスズキ自動車が業務提携することになりました。

国内最大手の自動車メーカートヨタ自動車と、独立を保ってきたスズキ自動車の提携は大きなニュースになりました。

燃費疑惑後のスズキ自動車だけに、経営に影響が出ているのかと思ってしまいますが。スズキが提携先を探しているのがもっと前から行っていたこと。VWとの提携が失敗して次の相手を探していたらこのタイミングになったのかもしれません。

今回の提携はスズキとトヨタにとってどんなメリットがあるのか、どんな思惑があるのか。
報道された内容をもとに考えてみたいと思います。

 

目次

業務提携に至った理由

トヨタとスズキの業務提携は、スズキ自動車の方から提案したそうです。
記者会見でも鈴木会長がこのような発言をしています。
「9月、協力をいただくことはできないかと思い切って相談した」
スズキの側から提携を申し込んだのでした。

現代の自動車開発はお金がかかります。マツダ、スバル、三菱自動車クラスの会社も自力ではやっていけません。もちろんスズキも例外ではありませんでした。中規模メーカーのひしめく日本の自動車業界もいずれ再編されるとの見方は以前からありました。

スズキとしては協力はしてほしいが独立性は保ちたいという考えが常にあります。

1981年からゼネラルモータース(GM)と提携していた時はスズキの独立性は保たれていました。

2009年。スズキはVWとの提携を発表しました。でも、VWは甘くはありませんでした。VWがスズキを支配しようとしたのに反発して提携は解消になりました。

スズキは今すぐ提携しなければやっていけない。というほど危ないわけじゃありません。
会社の売り上げではマツダに継ぐ国内第5位のメーカーです。

  資本金(円) 2015連結売り上げ(円)
トヨタ 3970億 28兆4031億
ホンダ 860億 11兆8424億
日産 6058億 10兆4825億
マツダ 2589億 3兆4,066億
スズキ 1380億 3兆154億
富士重工 1537億 2兆8779億
三菱自動車 1657億 2兆934億
ダイハツ 284億 1兆1,910億

 

スズキは軽自動車のイメージがありますよね。ダイハツと同規模の会社だと思う人もいるかもしれません。海外ではコンパクトカーの売り上げを伸ばしてるのでスバルや三菱自動車以上の規模の会社になっていたのでした。国内販売台数では第3位。世界でも10位なんですね。

でも、将来のことを考えればいつまでも単独ではやっていけない。VWとの提携を解消したものの、新しい提携先は探していたようです。VWとの提携解消からちょうど1年。意外と早く新しい提携先が見つかったといえるのかもしれません。

 

スズキの思惑は?

鈴木会長は記者会見でこのように発言しました。
「伝統的な自動車技術を磨くのみでは将来は危うい」

もともと会社の規模が小さいスズキは提携先を探していました。
現代の自動車開発は省エネ技術、安全性、自動運転とお金のかかる投資が必要です。
自力で開発できるのはホンダクラスのメーカーまでです。(ホンダもGMと燃料電池を共同開発することになりましたが)

 

トヨタの思惑は?

トヨタにとってスズキと提携するメリットは何でしょうか?

すでにダイハツを100%子会社にしています。今後は新興国の小型車市場はダイハツに任せる方針を立てたばかりです。トヨタが欲しい技術はスズキは持っていません。でもトヨタの販売戦略上は必要になるかもしれないです。

 

トヨタ製技術を世界標準にするための仲間

トヨタの豊田彰男社長は記者会見でこう述べています。
「標準化に向けた仲間つくりなど、他社との連携が重要な要素となる」

トヨタの作る新技術を広めるためには採用するメーカーが多い方が有利。自動運転、電気自動車など世界のメーカーと張り合わなければなりません。そのときトヨタ製新技術を搭載して世界に広める味方は多い方がいい。という考えがあるようです。

他にも理由はあるかもしれませんが、この理由が一番大きいように思えますね。

 

新興国市場

トヨタは日本や北米には強いですが、アジアには弱いです。ダイハツもあまり海外進出は進んでいません。

でもスズキはインドで54%のシェアを持っています。スズキがインドで築いた販売網もトヨタ・ダイハツ陣営には魅力に見えるかもしれません。

ただし、スズキはVWとの提携でも経営に対する介入は嫌がり独立性を主張しました。トヨタがスズキの資本や経営方針に影響力を及ぼそうとするとVWの二の舞になる可能性はあります。

ダイハツとの関係は?

スズキがトヨタと提携すると一番影響を受ける会社はダイハツです。

何しろ長年軽自動車市場で1、2を争うライバルメーカーです。ダイハツはコンパクトカーでも新車を投入してコンパクトカー市場でも鈴木のライバルになりつつあります。さらに東南アジアに進出して海外でも鈴木のライバルになりつつあります。

部品の共有化が進んだり、トヨタの開発した技術が多くのメーカーに採用されればコストダウンにつながります。間接的にはメリットもあるかもしれません。

でも、ダイハツの経営戦略には影響が出るかもしれません。
軽自動車市場ではスズキとダイハツを合わせれば6割のシェアになります。
スズキがトヨタと資本提携すれば独占禁止法に引っかかる可能性が出ます。その点についても公正取引委員会と調整する可能性はありそうです。

海外戦略にも影響を与えるかもしれません。インドや海外で持つスズキの販売網にダイハツの車が乗るかどうかはわかりません。スズキとダイハツが地域によって住み分けする可能性はあります。

いずれにしろ。ダイハツへの影響はトヨタの思惑と、スズキがどの程度トヨタと提携するかにかかっていそうです。トヨタの開発した新技術の採用だけなら、ダイハツへの影響はほとんどないかもしれません。

結局はどうなる?

 

スズキとしては技術開発の負担は減らしたいが、経営に口出ししてほしくない。という立場。
ずいぶんと都合のいい話ですが、世界のトップを争う大企業相手に通じるでしょうか。

もともとトヨタとスズキは創業者同市ということもあり、まったく縁がないわけではありませんでした。鈴木会長もエンジンの開発では豊田章一郎(現社長・彰男氏の父親)に相談したこともあったようです。1970年代には排ガス規制に苦しむスズキに対してトヨタはダイハツを通じてスズキにエンジンを提供しました。現社長鈴木俊宏氏はトヨタグループのデンソーで働いていた経験もあります。トヨタはVWに二の舞にはならず、時間をかけて提携を進めていくかもしれません。

スズキとしては外資系のドライな日産よりも、多少は交流のあるトヨタの方が相談しやすい事情はあったかもしれません。

メディアではトヨタへの一極集中が進み1強多弱になると煽る論調は目立ちます。
資本提携についてはまだ何も発表されていません。ダイハツを傘下に入れているトヨタとしてはスズキをどうするかこれからじっくり考えるというところなのでしょう。自社製技術を世界標準化するための同盟相手(あるいは先兵)と考えてるのかもしれません。

トヨタとスズキの提携は大きなニュースにはなりますが、案外影響は少ないのではないかと思います。結局はトヨタがマツダに行った程度の技術提携にとどまるのではないか。との見方もあります。

いずれにしろまだ具体的な提携内容は決まってないようなのでこれからの交渉次第なのでしょう。

 

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