日本と韓国の輸出管理をめぐってさまざまな報道があります。なかでも韓国がGSOMIAを交渉の材料に使っていることが話題になりました。日本が韓国をホワイト国(輸出管理手続きの優遇国)から外すと発表して、それに対して対抗手段としてGSOMIAの破棄をちらつかせているからです。
ではGSOMIAとはいったい何でしょうか?内容や読み方、延長期限を紹介します。
GSOMIAとは
GSOMIAの正式名称は「General Security of Military Information Agreement」
和訳すると「軍事情報に関する包括的保全協定」
日本では「軍事情報包括保護協定」と呼ばれています。
日本はアメリカや韓国、NATO諸国など様々な国、60カ国と協定を結んでいます。
GSOMIAとは国と国が軍事情報を共有しよう。共有した情報は他国に漏らさないようにしよう。という約束です。
どのような情報かというと、軍事技術、戦術データ、暗号技術、諜報活動で得られた情報も対象になります。
とくに偵察や電波受信などで得られた情報収集活動や諜報活動で得られた情報の共有が大きいです。
GSOMIAの読み方
GSOMIAの読み方は「ジーソミア」といいます。発音する人によっては「ジーソミャ」と聞こえる人もいます。会話を急ぐ必要がないならジーソミアでいいです。
日韓秘密軍事情報保護協定
この協定はわりと新しいです。
日本とアメリカは2007年8月10日に協定を結びました。
現在ニュースで問題になってるGSOMIAとは日本と韓国の間でむすばれた「日韓秘密軍事情報保護協定」のことです。
日本と韓国は2016年11月23日に日韓秘密軍事情報保護協定に署名しました。
朴槿恵政権の時代です。
日本と韓国は協定を結んでまだ3年しかたっていません。
目的とメリット
日本と韓国がGSOMIAを結ぶ理由は北朝鮮の情報を共有するためです。
日本と韓国が共有できる情報といえば北朝鮮軍の動きについての情報が中心になります。
日本が提供する情報としてはイージス艦や情報収集衛星、偵察機、レーダーサイトがキャッチした北朝鮮のミサイルや航空機の動き、核実験が行われたときの影響についての情報が主だと言われます。
韓国が提供する情報としては北朝鮮の持つ核やミサイル、脱北者がもたらす北朝鮮国内や国境付近の情報が期待されています。
日本としては北朝鮮による拉致被害者の情報も欲しかったようです。
でも日本側としては「期待したほど韓国からの情報が提供されていない」「とくに人(脱北者)がら得られる情報が少ない」という感想をもっているようです。
そもそも北に甘い文政権になってからは期待した情報が得られていません。既に日本にとってはGISOMIAの存在価値がなくなっているともいえます。その程度の情報なら米国から提供してもらうこともできます。
日韓のGISOMIAはべつになくてもいい。日本にとってはあまりメリットはないようです。
GISOMIAの期限と延長
日韓秘密軍事情報保護協定の期限は1年。毎年自動的に更新します。
つまり黙っていたら協定を続けるということ。
つまり手続きをしない限り、自動的に協定は延長されます。
協定を破棄する場合は更新期限の90日前までに相手国に連絡しなければいけません。日本と韓国は11月23日に協定を結んでいます。つまり。
日韓のGISOMIAを破棄するならタイムリミットは8月24日です。それまでに相手国にGSOMIAを破棄すると連絡しなければいけません。
8月の間はGSOMIAを巡って激しい意見交換が行われるでしょう。
GSOMIAとホワイト国除外の問題は別
そういえば日本が韓国をホワイト国から外す8月2日を目前にした7月30~8月1日にかけて。アメリカのポンペオ国務長官が仲介する。という報道がありました。
8月2日に行われる日米韓外相会談で「アメリカ政府の仲介案が出るのではないか」と報道されました。
ロイターのいう政府高官の話とやらは誰が言ってるのかわからないので胡散臭いです。しかも英語版のロイターには政府高官の発言の記事はない。
ポンペオ国務長官の発言はASEAN外相会談が行われるバンコクに行く前、記者団から出された質問のひとつに答えたものです。
ポンペオ国務長官の発言内容は以下の通り。
「私はカン外相と会い、河野外相と会い、そしてその2人と会い、前進できる道を見つけられるように勧めます。彼らは素晴らしいパートナーです。彼らは北朝鮮の非核化について我々と日韓は密接に動いています。ですから我らが二カ国それぞれにとってよい立場を見つけられる手助けをすることができるのであれば、それがアメリカや二カ国にとって重要です。それで私たちは良い会話をして、よい立場になることができるのを助けることができることを望みます」と応えています。
アメリカ人らしくない非常に回りくどい言い回しをしています。これは記者の質問にとっさに答えただけ。熟慮した内容ではない、といえるでしょう。要するにアメリカの関心はあくまでも北朝鮮の非核化。そのためにポンペオ長官は日韓の話し合いができるようにと願望を語っているに過ぎません。輸出管理の問題を仲裁するとは語っていません。
対北朝鮮関係で軍事問題に直接関わるのはGSOMIA。つまり韓国がGSOMIAを破棄しないよう日韓に話し合いをうながすのが目的なのです。輸出管理の話ではありません。
もちろん韓国側はその場で輸出管理を話題には出すでしょう。アメリカ政府関係者もリップサービスとして「両者に冷静な対応をもとめる」「話し合いを希望する」くらいのことは言うでしょう。アメリカの関心は対北朝鮮の非核化、GSOMIAなのです。
GSOMIAの交渉は外務省が担当します。だから外相会議で議題になるのです。防衛大臣が交渉するわけではありません。
ところがロイター通信の報道をもとに日本や韓国のマスメディアは輸出管理をめぐってアメリカが仲裁案を出す。日本に一時休止をもとめる。などの報道が流れました。これは事実と違います。フェイクニュースです。
そもそも8月2日の午前に閣議決定をするのに8月2日に日米韓外相会談で輸出管理の話をしたのでは間に合いません。
どうしてこのようなデマがマスメディアの報道として流れるのでしょうか。
GSOMIAをネタにして嘘の報道を作るのは止めてほしいものです。
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