神奈川県横浜市の病院で患者が中毒死した事件で体内や点滴袋からから界面活性剤が発見されました。死因は界面活性剤だと考えられています。点滴には入ってないはずのものなので意図的に入れたのでしょう。今のところ薬剤が入れられた可能性もあるとして異物混入の疑いで捜査が続いています。
この事件で注目をあつめる界面活性剤とはいったいなんでしょうか。あなたの身の回りにもふつうにあるものなんですが。意外と知られてないものなんですね。
界面活性剤とな何なのかお話しします。
界面活性剤とは何?
何のために存在するの?水と油を混ぜるためです
いかにも専門用語まるだしな感じの「界面活性剤」という言葉。危険な薬品だと思ってる人もいるようですが。あなたの身の回りにふつうにありふれてるものです。
洗剤、せっけん、シャンプーは界面活性剤の働きを利用しています。飲み物にだって界面活性剤は入ってるんです。
界面活性剤とは簡単に言うと「油と水を混ざりやすくするもの」なんですね。
ほんとうは界面活性剤の意味はもっと広いんですが、身の回りにあるものにかぎれば「水と油を混ぜる物」と考えていいです。
言葉の意味は「界面」を「活性(化)」させる「もの(剤)」
物と物の間には境界があります。たとえば、水と油の境目ははっきり分かれていますよね。
物と物の境目を専門用語で”界面”って言うんです。水と油ははじきあうので混ざらないんですね。
くっきり分かれちゃってる境目を混ざりやすくするための物が。界面活性剤です。
「水と油」という言葉があるように。
水と油は仲が悪いから一緒にいられない。
仲の悪い物の代表格ですよね。
じゃあ、水と油の仲をとりもってくれるもがあれば、仲良くできるんじゃないか。
ということで界面活性剤の登場です。
界面活性剤は仲の悪いものを仲良くさせるための仲介人なんです。
なんで水と油を仲良くさせることができるの?
犬猿の仲の水と油を仲良くさせる秘密は何でしょうか?
界面活性剤はどんな能力を秘めてるんでしょうか?
それは、界面活性剤が水と油の両方と親しいからなんです。
仕事や人付きありでも、ありますよね。
知らない人、喧嘩した人と仲良くなりたいけどお互いが直接会うとうまくいかないってこと。
そんなときはどうしますか?
共通の知人を通して話をしてもらいますよね。
界面活性剤は水と油にとっての共通の知人なんです。
仲人みたいなものなんですね。
水とも仲良くできるし、油とも仲良くできる。
そんな特別な能力があるんです。
そんなことができるのは、界面活性剤の仕組みが特殊だから。
界面活性剤は油となじみやすい部分と水となじみやすい部分からできています。
半分男で半分女だから、両方の気持ちがわかるみたいな。そんな感じです。
なんで界面活性剤が洗剤になるの?
界面活性剤は洗剤になります。
水と油が混ざりやすくなるとなんで洗剤になるんでしょうか?不思議ですよね。
実は洗濯物のよごれは油汚れが多いです。
油汚れというとコンロのまわりとか換気扇を思い浮かべるかもしれません。
でもあなたの服も油汚れがついてるんです。
体から出る皮脂や汗など脂分が衣服の汚れになることって多いんですよ。
泥汚れなら水で洗えば落ちることが多いです。でも、皮脂は油なので水だけでは落ちません。
水をはじいて、衣服にしっかりくっついています。
油と水になじみやすい界面活性剤があると衣服についた油分が水に溶けやすくなるんですね。
界面活性剤は水に溶けた油分をしっかり捕まえてます。だからふたたび油が衣服に戻るのを防いでくれる役目もあるんですよ。
このような性質を利用して、洗剤、シャンプーに使われてます。セッケンも界面活性剤の仲間です。服や食器だけでなく、車、機械、医療品。様々なものをあらうために界面活性剤が活躍しています。
だからあなたの暮らしにないと生きていけないんですね。
重曹は油を界面活性剤に変身させる薬
「重曹でも油汚れは落ちるよ」と思うかもしれません。
これはアルカリ性の重曹が油と化学反応して油を界面活性剤に変えてしまうんですね。界面活性剤になった油は水に溶けやすくなります。界面活性剤になった油は他の油を水に溶けやすくします。
アルカリで油が落ちるのはこういう理由なんですね。この反応を「ケン化」といいます。
アルカリ性が強いほど、ケン化は起こりやすいです。だから重曹よりもアルカリ性の強いセスキ炭酸ソーダの方が汚れが落ちるんですね。温度も高い方が反応しやすいです。
界面活性剤は危険なの?
というわけであなたの身近でふつうに使われてる界面活性剤なんですが。
「界面活性剤」は不思議なほど嫌われています。
お洗濯や洗い物、お風呂や洗顔で毎日使ってるのに嫌ってるなんて不思議だと思いませんか?
これはかつて、大量の洗剤が海や川を汚染して公害になったこと。
SDS(ドデシル硫酸ナトリウム・ラウリル硫酸ナトリウムともいいます)に発がん性があるとして騒がれたことが原因だと思います。
水の汚染は使いすぎが原因だった?
確かに、SDSは石鹸や天然成分よりも分解されにくい性質があるので大量に流すと川や海が汚染されます。でも石鹸や天然成分よりもよく効くので少ない量で汚れを落とすことができます。むしろ天然成分の方が汚れが落ちにくいのでたくさん使わないといけません。結局SDSを天然成分に変えても、海や川を汚染することには変わりなんですね。
学生時代に僕のいた研究室では実験器具を洗うときにママレモンを使ってました。それだけよく汚れが落ちるからなんです。だから水で10~20分の1に薄めて使ってました。それでも十分使えるんですよ。どれだけ無駄に使ってるかって証拠ですよね。
現在の市販の洗剤は最初から薄くなってるものが多いですね。それでも5倍に薄めても使えますね。メーカーとしてはたくさん使ってもらった方がいいんでしょうけどね。
今では下水道が普及してるので水の汚染は気になることはありませんが、下水がないところでは洗剤の使いすぎが水質汚染のもとになってるかもしれませんよ。
ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)の発がん性は?
1970年代、SDSがあるのではないかと騒がれて問題になりました。そこで世界中の研究機関が研究しました。その結果。発がん性があるとは証明できませんでした。
だから国際がん研究機関(IARC)の発がん性物質リストには載っていません。
IARCは世界保健機関(WHO)の下部組織です。厚生労働省、カナダ健康省、米国癌学会など世界中の研究機関が調べても発がん性はないと結論が出てるんです。
今でもSDSは危険といううわさはなくなりません。
これは天然成分(と称する)成分の入った石鹸や洗剤を売る業者の宣伝の影響なんです。
SDSについてはこちらでも詳しく説明しています。
毒性はどうなの?
でも、点滴に界面活性剤が入ったた患者さんはなくなりました。
界面活性剤には毒があるんでしょうか。
点滴はもともと危険な行為
まず気を付けないといけないのは「点滴は血管の中に直接物を送り込む行為」ということ。空気が入っても血管は詰まります。純水を入れても危険だといわれます。毒性があるなしに関係なく、もともとは血管の中に直接物を入れるのは危険なことなんですね。だから厳重に管理して使わないといけないものなんです。
もちろん点滴薬は体の中に入れても大丈夫なように成分を調整されています。
だから、きちんと調整された点滴薬を使えば問題ありません。
界面活性剤の毒性
とはいっても、体の中に入れても大丈夫な量には限度があります。
水や塩、アルコールも限度を超えれば人は死にます。世の中のすべての物質には限度があるんですね。いくら体に入れても絶対安心なものはないのが現実なんです。
SDSの場合、中毒症状が起きる量はどうなんでしょうか。
LD50(急性毒性)という数字を見てみましょう。これはその物質を体の中に入れたときにどのくらいの量を入れると生き物が死ぬかという数字です。50というのは50%の確率で死ぬということです。
動物試験の結果では、ラットに体重1kgのあたり1200~2730mgのSDSを食べさせると50%のラットが死亡するという結果になりました。
これを体重50kgの人間に置き換えると、60gのSDSを食べると半分の確率で亡くなる可能性があることになります。
SDSそのものを食べた場合ですよ。SDSの入った洗剤ではありません。間違えないでくださいね。
あなたの普段の生活ではこれだけのSDSに触れることはありません。心配することはありません。
物が血管の中に直接入ると飲み込んだ時や皮膚に塗った時よりはるかに効きやすくなります。もっと少ない量でも亡くなると思います。点滴にコーヒーやアルコールを入れても似たような結果になるかもしれません。点滴薬に異物を入れること自体が問題なんですよね。
逆性石鹸は石鹸って名前は付いてるけど、かなり性質の違うものです。
詳しく知りたい方はこちらを見てくださいね。
逆性石鹸って何?実は家庭にもある消毒薬です
コメント