ホルマリンを投与された患者が神経痛、嘔吐、下血などの障害が出るという事件が起きました。
兵庫県姫路市の病院で内視鏡検査のときに誤ってホルマリン液をつかってしまったということです。
劇物と紹介されるルマリンってどんなものなんでしょうか。
なんで劇物ホルマリンが病院にあった?
そもそもなんで、劇物のホルマリンが病院に置いてあったんでしょうか?
ホルマリンには殺菌作用があります。だから医療器具の洗浄に使ってるんですね。洗ったあとは今回のホルマリンは10%水溶液ですが、手術室で使うものなのが間違って内視鏡検査の部屋に置かれていたそうです。
ホルマリンを誤注入
出典:NHK NEWS WEB
ホルマリンって何?
ホルムアルデヒドが水に溶けた液体です
じゃあ、ホルマリンって何でしょうか?
実は、ホルムアルデヒドが水に溶けた液体がホルマリンなんです。
ホルムアルデヒドも毒物として有名ですよね。シックハウス症候群やアレルギーの原因じゃないかって言われる物質です。
ここでは、ホルムアルデヒドを水に溶かした、ホルマリンについて説明します。
ホルマリンの役目
ホルマリンは無色透明。鼻を突くような刺激臭があります。
強力な殺菌作用があります。だから、消毒に使われてるんですね。
防腐作用もあります。
でも、毒性が強いというので一般にはあまり使われなくなりました。医療機関でも特に感染に神経質な手術室とか一部の人しか使ってません。最近ではホルムアルデヒドを分解したりする装置もあるのでそういう設備のあるところでないと使わないようです。それだけ扱いが難しい薬品なんです。
ホルマリンは標本に使われますよね。理科の実験室にある瓶に入った標本を見たことありませんか?なぜ標本を作るときにホルマリンを使うかというと。ホルマリンに漬けるとたんぱく質が固まって腐りにくくなるんです。
たんぱく質はアミノ酸でできています。ホルマリンはホルムアルデヒドが水に溶けた液体です。
ホルムアルデヒドはアミノ酸にくっつく性質があります。くっつくだけじゃなくて、隣のアミノ酸にもくっついてしまう。そうなると、アミノ酸とアミノ酸を結び付けてしまうんですね。アミノ酸にホルマリンがくっつくのをどんどん繰り返すと、アミノ酸が固まってしまうんです。
わかりやすく言えば、ホルムアルデヒドはアミノ酸とアミノ酸をくっつける接着剤みたいなものです。
固まったアミノ酸は生物が生きていくために必要な働きができなくなります。
逆にホルマリンで固まったアミノ酸は微生物や酵素の分解もできなくなります。だから腐らないんですね。
尿素樹脂(ユリア樹脂)というプラスチックの仲間があります。尿素をホルムアルデヒドで固めたものが尿素樹脂なんですね。尿素とアミノ酸は構造が似てるので、ホルムアルデヒドと反応するんです。
もちろん、ホルマリン漬けがプラスチックみたいにガチガチに固まるわけじゃないです。でも腐りにくい物にかわる性質があるのは似たような反応が起きてるせいなんですね。
ホルマリンの毒性
ホルマリンが危険なのはホルムアルデヒドのせいです。
ホルマリンを直接飲んだり体内に入れると危険ですが、蒸気を吸うのも危険です。ホルマリンからはホルムアルデヒドの蒸気が出ているからです。
ホルムアルデヒドの毒性は、のどや呼吸器、目などに刺激があり炎症を起こしたりします。ひどいときには呼吸困難や肺炎になることがあります。
飲み込んだ場合は胃や消化器官の粘膜がただれたり傷ついたりします。嘔吐、出血、腹痛が起きます。
神経に障害が出ることがあります。めまい、無気力、体の自由がきかない、昏睡状態ことがあります。
WHO(世界保健機構)の下部組織、IARC(国際がん研究機関)の発がん性物質リストでグループ1に指定されています。つまり「人間に対して発がん性がある」と認められています。
ホルムアルデヒドは「毒物及び劇物取締法」という法律で劇物に指定されてます。1%以上ホルムアルデヒドが入った水(ホルマリン)は劇物の対象になります。
ホルマリンを捨てる時はアルカリで中和しないと捨てることはできません。水酸化ナトリウムや消石灰で中和する方法が一般的です。
昔は1%以下に水で薄めて捨てることもやってたみたいです。でも今は厚生省によって処理して捨てることが義務付けられています。
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