発がん性物質として注目のアクリルアミド。
なぜか日本では油で揚げたポテトチップスやスナック菓子だけが批判を集めていました。
アクリルアミドは他にも含まれているのです。
こげた部分に多い物質なのでスナック菓子とはかぎらないんですね。
アクリルアミドとはどんな物質なんでしょうか。
アクリルアミドとは
発がん物質として注目のアクリルアミドとはいったいなんでしょうか。
アクリルアミドの化学組成式は
CH2=CH-CO-NH2
アスパラギン酸とブドウ糖などが反応してできる物質です。
120℃以上の高温でできる物質です。
食べ物の焦げに入っている成分ですね。
発がん性のおそれがある物質
焦げが発がん性があるというのは、以前からいわれていました。
焦げの正体はアミノ酸と糖が高温で反応したもの。
その焦げに入っている成分のひとつがアクリルアミドなんですね。
2002年にスウェーデンで、イモを焼いたり揚げたものからアクリルアミドが見つかって問題になりました。
2005年にWHO(世界保健機関)とFAO(国際連合食糧農業機関)が「食品中のアクリルアミドは健康に害を与える恐れがあり、含有量を減らすべき」と注意を呼びかけています。
2014年には日本の内閣府食品安全委員会が、動物実験の結果より「遺伝毒性をもつ発がん物質」との評価結果を発表しました。
現在、IARC(国際がん研究機関)のリスク評価では「グループ2A」にランクされています。
グループ2Aは「人間に対しておそらく発がん性がある」という物質です。
「人間ではまだ確認していないけど動物実験で確認したので、たぶん人間にも発がん性があるでしょう」という意味です。
グループ2にランクされると、世間では発がん性物質として扱われています。
工業世界では毒物だった
もともと工業製品(プラスチック等)の原料としても使われていました。
神経や肝臓への毒があるということで、法律で「劇物」に指定されていました。
労働安全衛生法では0.1%以上含むものには表示の義務があります。
ただ、工業製品の材料の原料ということで人間の口に入るものではありませんでした。
一般に知られることはなかったと思います。
食べ物に入ってるアクリルアミドの危険性は?
動物実験の結果より、発がん性のあることはわかりました。
人間にもあると判断できると食品安全衛生委員会も発表しています。
食べ物を焼いたときにできる、香ばしい香りの元には大量に取ると発がん性の疑いのあるものがあります。
アクリルアミドもそのひとつです。
とはいっても、全ての食べ物を加熱しないで食べたら食中毒になってしまいます。
問題はどうすれば安心して食べ物を食べられるのかということですよね。
アクリルアミドは120℃以上で加熱するとできます。それ以下の温度ではほとんどできません。
アスパラギン酸と糖が反応してできます。
アスパラギン酸は、ジャガイモやアスパラガスなど野菜に含まれています。
キーワードは アスパラギン酸 + 糖 + 120℃
ここで早とちりする人もいるかと思いますが。
アスパラギン酸だけでは、アクリルアミドにはなりません。
アスパラギン酸と糖がいっしょに120℃以上で過熱されたときにできるのです。
油が悪いとかの問題ではなく。
温度が問題なのです。
120℃以上で加熱する調理法は、焼く、揚げる、炒めるという調理法です。
水を使う調理法。煮る、蒸す、茹でるという方法ではアクリルアミドができにくいです。
そこで、アクリルアミドの危険から身を守るにはこのふたつを気をつけましょう。
・材料を減らすことと
・アクリルアミドをできるだけ作らないこと。
アクリルアミドの材料を減らす
ジャガイモやアスパラガスを食べないということではありません。
ジャガイモは保管していると糖が増えます。
買ったらなるべく早く食べてしまいます。
アスパラギン酸や糖は水に溶けます。
野菜を調理前に水で洗うと、表面のアスパラギン酸や糖が溶けます。
洗ったあとに焼きます。
焦げやすい表面にはアスパラギン酸や糖が減っているので、アクリルアミドはできにくくなります。
アクリルアミドをできるだけ作らない
煮る、蒸す、茹でるなら問題ありませんが。
炒めたり、あげるときは。
できるだけ短時間で済ましましょう。
一部分だけが高温になって焦げないように、できるだけかき混ぜながら焼いたり炒めましょう。
実はガンになるのはほかの原因の方が多い
とはいっても。
おこげは昔から人間が食べてきたものです。
もちろん、ゼロにできればいいのですが。
でも、アスパラガスやポテトチップスを食べるのをやめたからと言ってゼロにできるわけではありません。とうもろこし、パン、コーヒー、ココア、ビスケットにだって入っています。
アクリルアミド測定結果
食品1kgあたりに入っているアクリルアミド(単位はμg・100万分の1グラム)
食品 | 日本 | 海外5カ国 |
ポテトチップス | 467~3544 | 170~2287 |
フレンチフライ | 512~784 | 50~3500 |
ビスケット、クラッカー | 53~302 | 30~3200 |
朝食用シリアル | 113~122 | 30~1346 |
とうもろこしチップス | 117~535 | 34~416 |
食パン、ロールパン | 9~30 | 30~162 |
チョコレートパウダー | 104~141 | 50~100 |
コーヒーパウダー |
151~231 |
170~230 |
ビール | 3以下 | 30以下 |
海外5カ国(ノルウェー、スウェーデン、スイス、英国、米国)
厚生労働省HP,”加工食品中アクリルアミドに関するQ&A”より。
動物実験で確認できたといっても、それを人間で実現しようと思うと。
アクリルアミドばかり毎日食べないといけません。
そんなことは不可能です。
発がん性物質というと、インパクトがあるので話題になりやすいのですが。
ガンになる原因はストレス、飲酒、喫煙や活性酸素の方がはるかに大きいのです。
アクリルアミドを気にして調理するあまり、ストレスが溜まっては意味がありませんね。
東京有明医療大学教授・川嶋朗氏は著書の中でこう書いてます。
おこげだけが原因でがんになるには、一生の間に何トンもの量を食べなければなりません。ですから、おこげは発がん性物質だから食べないようにしているというのは、あまり意味がないのです。
川嶋朗,”逆に病気を呼び込んでいる44の健康法”,宝島社.より抜粋
焼けすぎはよくない、あげすぎはよくない。
くらいの程度でいいのではないでしょうか。
農林水産省のHPに家庭でできるアクリルアミド対策が載っています。
参考にしてください。
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