希望退職は仕方ない・リストラ最前線

仕事の問題
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従業員代表だった僕はある週末の夜、会社から呼ばれます。
会社取締役から言い渡されたのは人員削減の通告。

慢性的な赤字体質とリーマンショック以降、回復する兆しのない業績。
ある程度は予想してたものの。自分が交渉の当事者になることへの不安は想像以上の重荷でした。

しかも、従業員代表になって最初の交渉が人員削減。

電話で他の組合役員に事情をつたえたものの、
一人で悩むことになった週末。

これが前回までのいきさつです。

とりあえず自分の考えをまとめ。
週明けの打ち合わせに臨みます。

 

 

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リストラ交渉開始

週明け。他のメンバーを集めて対策を話し合いました。

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上部団体にも相談しました。中小の組合が作る団体です。連合よりももっと下にある地方の組織です。

交渉そのものは我々代表団が行い。上部団体は一、二度交渉を行った後は、我々だけで行いました。もちろん交渉の経過を報告し、アドバイスをもらいまいした。

僕自身は人員削減そのものは仕方ない。と思っていました。だから「むやみに争っても仕方ない」と考えてました。

もちろん、利用できるものは利用します。
会社、特に中小企業は外部の交渉団が入るのを嫌います。だから通常は自分たちで交渉して、外部団体の応援はあるぞ。という姿勢は崩しませんでした。もちろん、会社も牽制はしてきます。お互いの駆け引きはすでに始まってました。

 

希望退職は仕方ない

 

人員削減は仕方ない。
それなら希望退職だけで済ませられないか。

従業員の代表が考えることではないかもしれません。
他の従業員が聞いたら怒るかもしれません。

でも、客観的に会社の業績、仕事量、組織を考えると。
「どうやりくりしてもすべての従業員は助けられない」
という考えで固まりつつありました。全社員の給料を半分以下にするのが受け入れられるなら別ですが。

それは開発という立場(つまり会社の伸びしろがどのくらいありそうかも予想できる)で、営業の情報も入ってくる。そんな立場にいたからそう思えたのかもしれません。
製造現場の人ならもっと強硬に反対したかもしれません。
でも「それなら僕を選ぶな」という半ば開き直りに近い心境でした。
立候補したんじゃない。選ばれたからやってるだけだから。
とはいうものの、無責任なことはできません。一方的な解雇はさせたくない。そんな思いでした。

僕は副代表までの経験はありましたが、代表の経験は初めてでした。他の仲間は僕以上に勤続年数の長い人が多かったのですが。組合役員の経験では似たようなものでした。

僕にとっては代表になっていきなりのリストラでした。会社としてはやりやすいタイミングだったかもしれません。過去の代表経験者にも意見を聞きつつ交渉を進めていきました。

 

他社を参考に交渉方針を固める

すでに関連会社では人員削減が行われていました。その内容も伝わってます。そのときは希望退職のほかにも、会社の指名で退職させる整理解雇も行っていました。その関連会社には労働組合はなく、会社のやりたい放題でした。法律や裁判の判例があってもあまり意味はありません。社内で起きてることは会社と従業員の力関係で決まるのです。

でも僕たちは同じ方法で解雇させるわけにはいきません。強制的な解雇を回避し、条件闘争するしかないと思いました。過激な争いは避けて、希望退職にとどめる。そのためにも少しでもいい条件を引き出す。という作戦をとることにしました。他の組合役員の人たちも賛成してくれました。それほど会社の状況は悪かったということです。

労使交渉は野党やマスコミの政権批判とは違います。人気やメンツはどうでもいいんです。
対決姿勢をとって従業員をたきつけても交渉が難しくなるだけです。どれだけ有利な内容を勝ち取るか。どれだけ被害を減らせるか。それだけが頭の中にありました。

交渉の前に提案したこと

条件交渉の前に会社に提案したのは極力会社の外部に人員削減を知られないようにすること。出入りの業者に知られないようにするため、掲示物、社内の発言など、できるかぎり人員削減を連想させる言葉は出さないことにしました。

会社が潰れそうという情報が外に漏れたらますます取引がなくなる可能性があります。人員削減したというのは、いずれは分かることです。でもだからといって何もしなかったら傷口を大きくするだけです。予想できる損失はできるだけ減らす。

店や会社にとって、実際の減収以上に怖いのは風評被害です。なんとか持ちこたえていたのに、悪いうわさが広まったせいで潰れたという話はよく聞きます。その動きがマスコミで報道される大企業ならともかく、中小では風評被害が命取りになることも珍しくありません。

だから、一般従業員に公表する前に考えたのは風評被害を減らすことでした。そんな僕たちの提案に会社も「それはそうだな」と意外な顔をしつつもあっさり承諾・・・どうやら想定外の提案だったようです。

会社から社員への発表する際には、従業員の質問を受ける時間も設けるよう提案しました。いきなり経営陣に質問するのはやりづらいと思ったので、僕が前に出てよびかけて質問を受け付けるというスタイルをとりました。

追い詰め目られてるのにそんなことを考える余裕があるのか?
と思うかもしれません。でも、このころになるとあれこれと考えが浮かんで来るようになったのです。もちろん仲間で話し合うことで様々な意見も出てきます。人間は追い詰められると普段は想像できないこともできる。と思った日々でした。

人員削減公表の日

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夕方。回りくどい言い回しで従業員が食堂に集められました。食堂にいるのは社員だけ。

集められた理由は公表してませんが、重苦しい雰囲気からはなんとなくこれから何が起こるのか察している様子でした。
まず経営陣から状況の説明と人員削減するという説明がありました。

当時の発表ではまだ具体的な削減の規模、条件、辞める人への対応はこれから交渉するという状況でした。

結局質問はほとんどありませんでした。それはそうです。おどろきと戸惑いがほとんどで、どう反応していいのかわかりませんよね。

会社の説明が終わると訪れた静まり返った場内。こういうときは怒号が飛び交うと思いがちですが実際にはその反対でした。
そんな気力もわいてこない。
人は困難に遭遇するとすぐには何もできない。

 

会社の説明が終わり、
食堂から出てきた人達の表情が暗かったのは日が暮れたせいだけではありません。

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なんともやりきれない思いです。

でも交渉はこれからなのです。

整理解雇の4要件とは・リストラ最前線を読む

 

これまでのいきさつ
1:だまされた!では済ませられない・あなたの思い込みは大丈夫?
2:リストラ交渉団最前線に立つ

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