入浴剤はなぜ温まるの?硫酸ナトリウムで体が温まる本当の理由

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入浴剤を使うと温まりますよね。普通のお湯に比べて湯冷めしにくいし、体の芯からあたたまる気がします。

入浴剤を使うと温まるのはどうしてなんでしょうか?入浴剤の成分は硫酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウム。とくに硫酸ナトリウムが入ってると体が温まりやすいといわれます。

なぜ硫酸ナトリウムが入ってると体が温まるのか考えてみました。

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硫酸ナトリウムはなぜ湯冷めしにくいのか?

市販の入浴剤の主成分は硫酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムです。

出典:バスクリン 森の香り(amazon)

 

硫酸ナトリウム(Na2SO4)は芒硝(ボウショウ)ともいいます。水に溶かすと中性になります。

炭酸水素ナトリウムは(NaHCO3)は重曹(ジュウソウ)ともいいます。家庭で油汚れを落とすのに使ってる人も多いと思います。水に溶かすと弱アルカリ性になります。

他にもいろいろ成分は入ってますが、この2つがあれば入浴剤になります。

つまり。硫酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムには体を温める秘密があるはずですよね。

 

硫酸ナトリウムを入れた入浴剤が湯冷めににくい理由としてこんな説明を聞くことがありませんか?

「硫酸ナトリウムが皮膚のタンパク質と結合して膜を作り。熱を逃がしにくくするため」

ネット検索するとこの説明はよく出てきます。

「なんだか科学的な説明。本当かもしれない」って思いましたか?

でも残念。この説には科学的な根拠はないのです。

はっきり言って嘘ですね。

「膜を作る」のは勘違い

硫酸ナトリウムがタンパク質と反応して膜を作るなんて、化学の世界ではそんな話は聞いたことがありません。

だいいち、皮膚のうえに勝手に膜をつくってしまったら危険じゃないですか?どうやってもとに戻すんでしょうか?温泉に入るたびに皮膚に膜が出来てしまうのでしょうか?

考えれば考えるほど謎が深まります。

硫酸ナトリウムには膜を作る性質はありません。

なぜ硫酸ナトリウムがタンパク質と結合して膜をつくるなんて嘘が広まってしまったのでしょうか?

僕も理由がわからなかったんです。

ところがある日。界面活性剤のことを書いた記事を読んでいてひらめきました。

「もしかして誤解の理由はこれかも」って。

犯人はSDS?

その界面活性剤とは「ドデシル硫酸ナトリウム」。

「ラウリル硫酸ナトリウム」ともいいます。シャンプーなどに入ってる界面活性剤ですね。SDSともいいます。

ドデシル硫酸ナトリウムはアミノ酸と結合してSDS+アミノ酸という物質をつくります。タンパク質はアミノ酸で出来てますから、SDSとタンパク質が反応してると考えてもいいです。

というわけで、SDSを人間の皮膚にまんべんなく塗ったとしたら、皮膚の表面のタンパク質と反応して膜みたいになるかもしれない。と想像できます。

実際にはそう簡単に膜をつくることはできません。

でも、妄想するのは簡単です。

硫酸ナトリウムとドデシル硫酸ナトリウム。名前が似てますよね。だから硫酸ナトリウムでも皮膚に膜ができると考えたんじゃないでしょうか?

でも名前は似てますが、全く違う物質です。

硫酸ナトリウムにはタンパク質と反応する性質はありません。勘違いなんですね。

ちなみに、SDSは危険だという意見もありますね。SDSの危険性については入浴剤とは関係ないのでこちらでお話しします。

界面活性剤に毒性はあるの?どんな物なの?

 

膜を作っても熱が逃げるのを防ぐことは出来ない

では仮に膜を作ることができるとしたら。熱は逃げにくくなるんでしょうか?

それも間違いです。水に触れてる部分が膜になったとしても膜の厚みは分子数個分です。1ミリの何分の1という薄さでしょう。たとえ細胞一個分が変化したとしても1ミリ以下です。

フケは角質が剥がれ落ちたものですが、あの薄さの膜が出来ると考えてもいいかもしれません。残念ですがそのくらいの薄い膜では熱が逃げるのを防ぐことは出来ないんです。

嘘だと思うなら何日も風呂にはいるのをやめて古い角質を残したままにして風呂に入って下さい。

つまり、新しい皮膚の上に古い皮膚が残ってる状態にするのです。そのぶん皮膚が分厚くなってるはずですよね。でも風呂から出た後のさめやすさは変わってないはずです。少なくとも温泉のときほど体は温まることはありません。

それにタンパク質が変化しても熱の伝わりやすさは変わりません。

 

温泉で温まるのは血流がよくなるから

 

ではどうして温泉に入ると体がよく温まるのでしょうか?

ナトリウムイオンが体に吸収されると血管が膨らみます。血流が良くなるので体が温まるんです。皮膚に近い毛細血管で暖められた血液が体の奥を走る動脈に戻り体の中も温まりやすくなります。

血流が良くなると表面だけでなく体の奥も温まりやすくなります。普通のお湯よりも、体の奥が温まりやすくなるのです。体の奥が温まっていると、体の中に熱を蓄えているのと同じなんですね。

体が冷えるときは皮膚の表面から冷えます。だから体の奥が十分に温まっていれば冷えるのに時間がかかります。

つまりナトリウムイオンがあれば硫酸ナトリウムでなくてもいいんです。

ナトリウムイオンを作るには硫酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムを水に溶かせばいいです。塩化ナトリウムでも出来ますよ。

だから塩風呂はよく温まるんですね。

塩や岩塩を入れたお風呂がよく温まるのはこのためです。

でも塩化ナトリウムは金属を錆びさせるので使えるお風呂が限られます。炭酸水素ナトリウムはアルカリ性なので皮膚が荒れてしまいます。

中性の硫酸ナトリウムは体や風呂釜に一番影響が少ないのです。

名前に硫酸と付いてますが、硫酸ナトリウムは中性なんです。理科の実験で使う硫酸とは違うので間違えないようにして下さい。化学ってややこしいですね。

というわけで入浴剤には硫酸ナトリウムが入っているのですね。

硫酸ナトリウムを入れたお風呂で体が温まるのはナトリウムイオンが体に吸収されると血管が開いて血流が良くなるため。なのです。

温泉の効能に詳しい人なら常識かもしれませんね。

美肌もほどほどに

炭酸水素ナトリウム(重曹)は皮膚についた油分を落として皮膚をきれいにする効果があります。いわゆる美肌効果です。でもアルカリ性なので使いすぎると皮膚が溶けます。重曹で手が荒れるのは皮膚のタンパク質が分解しているからです。

もちろん温泉に入ってるくらいの重曹では皮膚は溶けません。重曹はほどほどに使えば美肌ですが使いすぎると危険なのでご注意を。

 

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