最近、ネットで「り地域」という言葉を見ることがあります。
どこの地域?って思って調べると「韓国」を意味する言葉でした。
でもネットスラングではありませんでした。れっきとした”経済産業省の専門用語”なのです。だから世間で使われることはないのですが最近はネット界隈では「り地域」をみかけます。
そんな「り地域」とはいったいどういう目的で作られた言葉なのか、どういう意味の言葉か調べてみました。
り地域は経済産業省の専門用語
各国は兵器生産に必要な材料や技術の管理をしている
日本を含むアメリカ・イギリス・フランス・ドイツなど各国は国際輸出管理レジームを作って兵器目的に転用可能な物を管理しています。
兵器や毒ガス、核兵器開発など、軍事目的に使える物質の輸出管理をしているのです。
もし、うっかり輸出して相手国で毒ガスや生物兵器、核兵器が作られたら困るからです。また相手国が横流しして第三国やテロリストの手に渡り、軍事目的で使われても困ります。
輸出管理は経済産業省の役割
国際輸出管理レジーム加盟国は国内で輸出管理のための法律を作って運用しています。日本では経済産業省が管理しています。
輸出先の地域や輸出品によって必要な手続きが違います。信用できる国は手続きが簡単に。信用度の落ちる国はより詳しい情報の開示がもとめられます。
このような輸出管理は日本だけが行っているわけではありません。先進国なら普通に行っていることです。
経済産業省では輸出管理のために輸出先の国をグループに分けて、グループごとにどのような手続きが必要なのか管理しています。
経済産業省では、そのグループを「◯地域」と呼んでいます。
「い」からはじまって、ろ、は、に・・・と「いろは順」にグループ名を付けているのです。
例えばい地域はこのような国。
い地域① |
アイルランド、アメリカ合衆国、アルゼンチン、イタリア、英国、オーストラリア、オーストリア、オランダ、カナダ、ギリシャ、スイス、スウェーデン、スペイン、チェコ、デンマーク、ドイツ、ニュージーランド、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ブルガリア、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、ルクセンブルク。以上26地域 |
い地域② |
ウクライナ、エストニア、カザフスタン、キプロス、スロ バキア、スロベニア、トルコ、ブラジル、ベラルーシ、マルタ、南アフリカ共和国、ラトビア、リトアニア、ルーマニア。以上14地域 |
い地域①はニュースで話題になる「ホワイト国」と同じです。
以下
ろ地域
は地域
に地域
ほ地域
へ地域
と地域
と続いて。
ち地域 |
アフガニスタン、イラク、イラン、北朝鮮、コンゴ民主共和国、スーダン、ソマリア、中央アフリカ、リビア、レバノン |
そして
2019年7月から新しいグループができました。
それが「り地域」です。
現在「り地域」に認定されるのは韓国だけです。
り地域 |
大韓民国 |
り地域の意味
「り」って何だ?と思うかもしれません。
いろは順で「ち」の次だから「り」というごくシンプルな命名です。
「い地域」が一番信頼度が高くて、「り地域」が一番信頼度が低い国、最低の国と言われることがありますがそうではありません。
「い地域」と「り地域」では手続の方法が違う。というだけです。
なぜ「り地域」が最低の国だと思われたのか?
「り地域が最低の国」という誤解の原因としてはいくつかの原因があると思います。
「い地①」が優遇措置をうけられるホワイト国だったこと。
「り地域」ができるまではリストの最後だったのが「ち地域」。「ち地域」はイラン、北朝鮮、リビアなどのヤバ目の国が入ってます。
一番信頼度の高い国が先頭にあって、危険な国がリストの最後にある。これは信頼度の順に並んでいる。そのリストで一番最後に「り地域」が追加されたのだから「北朝鮮より信頼できない国だろう」と判断した人がいたようです。
ちなみにアメリカは「い地域」と「と地域」の両方に分類されていたりします。地域分けは手続きの仕方の違い。また品目によっても手続きの仕方が違うようです。
でもまあ優遇措置を受けられる国から外れるのは「それなりの国」ということなのでしょう。
り地域とは
じゃあ「り地域」とはなんだ?と思うかもしれません。
2019年7月時点での通商産業省の定義では
「り地域」とは
フッ化水素、ポリイミド、レジストの3品目に限り個別認可が必要なグループ です。
他の品目は「い地域①」と同じ手続きができます。つまり3品目の材料は原則3年ごとの一括認可です。
しかし8月からは韓国への優遇措置を撤回してホワイト国から外す方向で検討を行っています。
韓国はホワイト国を解除されたら通商産業省の区分けではどうなるのでしょうか。
もしかすると「り地域」の定義は変わるのでしょうか。インパクトがあって面白いネーミングです。ネットに一度広まってしまったものは今後も使われ続けるかもしれません。
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