日本企業の開発力が落ちたわけ・開発現場から見た企業の姿

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日本企業のモノつくりが危ない。
日本企業が衰退している。

今さらのように騒がれいますが
バブル崩壊と共に始まっていました。

日本企業が新製品を生み出す能力がなぜ衰えたか。
なぜウォークマンの様な日本発の斬新な製品が出なくなったか。

研究・開発の立場から日本企業の衰退について考えてみたいと思います。

 

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成果の分かりやすい職種ほど成果主義でモチベーションが下がる

日本企業に成果主義制度が導入されたとき、
営業や開発業務の人には有利だといわれました。

”成果を目に見える形で出しやすい” と思われたからです。

でも実際は逆の効果になりました。
なぜでしょうか?

一人の研究者が生涯の間に開発できる製品は限りがあります。
毎年ヒット商品を作れるわけではありません。

長い研究期間の末に売れる物ができるのです。
開発過程では何度も失敗します。
「こうするとうまくいかなかった」というデーターを積み重ねて、
最終的にうまくいくものを作るのです。

実験の失敗という人がいますが。
そうではありません。
最初から全てうまくいくはずがないのです。
データー集めの途中で予想と違う結果が出ても、
ネガティブに考える必要はありません。

もちろん、うまくいかない回数を減らすことは重要です。

でも日本人は他人のいい部分を評価するのは下手です。
でも、悪い部分をみつけて批判するのは得意です。

成果主義では、実験・研究がうまくいっていないときはマイナス査定になります。
開発者人生の中で大半がマイナス査定で、売れる製品ができれば高い査定となります。

しかも、サラリーマンの査定では高い評価をもらってもたかが知れてます。
実際の収入では2倍、3倍と収入が増えるわけでありません。

 日本企業の賃金のしくみについて。問題点はこの記事にあります。
  日本企業衰退を早めた制度

じゃあ、どうすればいいのでしょうか。
マイナス査定の期間を減らす努力をするのです。

すると。

短期間で作れる製品だらけになります。
短期間で作れる製品とは従来品の改良型です。
従来からあるやつに、今までにはなかった機能を加えたり。性能をアップしたり。コストダウンしたりします。
実際にはそれすらも簡単には作れません。
でもまったくの新規開発よりははるかに簡単に作れます。

 

斬新な新製品・企画は社内では喜ばれない

 

従来品の改良型は効果、売り方のイメージがしやすいです。
上司や営業の理解も得やすいです。
売りやすいものは営業も喜びます。

営業は「売れるものを作れ」と言います。
従来品の延長線上にあるものなら売りやすいから営業成績は伸びます。
新しい分野を開拓すれば当たれば大きいかもしれませんが。
それまでに多くの労力が必要です。
売れなかったら、時間とお金と人手がムダになります。
営業も積極的にはできません。

まったく新しいものを作っても、リスクの高いものは上司も営業も経営陣もなかなか評価してくれないのです。

日本企業では開発者にも営業にもアベレージヒッターが求められます。
失敗を減らし、小さな成果でもいいので
できるだけ成果を出し続けることが求められます。

もちろん企業が生き残るにはそういう開発しないとだめです。
でも、それだけではいつかまったく売れないときが来ます。
レコードがCDになったように。

 

現代の企業と旧日本軍の共通点

 

いくら経営者が「リスクを怖れずチャレンジしろ」と言っても。
会社側が社員のチャレンジを評価する仕組みを持っていません。

経営者が欲しいのは”よい結果”だけ。
よい結果にならなかったら、査定が下がるのは社員です。

「仕事はお金じゃない、やりがいの問題だ」と言われても、
生活が成り立たなければ「やりがい」は生まれません。

生活を犠牲にしても報われるリターンがあるならまだしも。
賃金の小さな変化を勝ち取るために、リスクの大きな仕事をすることはできません。

今でも精神論を経営論だと勘違いしている経営者は多いです。
PHPの発行物にも「精神論」はよく出てきます。

組織の体質は旧日本軍も現代の企業も同じなんです。

 

会社に必要なのは仕事中毒と社蓄

仕事そのものを趣味にできる人でないと、
モチベーションをあげるのは難しいです。
それが「仕事中毒、会社人間

あるいはモチベーションとは関係なく、
言われたとおりに動くだけの人間になるか。
それが「社蓄

そこから画期的なものが生まれるでしょうか?

新しいものに挑戦せずに既存品の改良ばかり続けていたら、
時代が変わったときに新しい環境に適応できなくなります。

ガラケーの無駄な高機能化と、スマホへの対応の遅れ。
そこにあるのは通信機器の規格の問題だけではありません。

実績のあるものの改良でしか生きていくすべを知らない会社。

もちろん他にも原因はあります。
でも、ここに書いたことは経済評論家もマスコミも指摘しないと思います。
彼らも成果主義を賞賛した人たちだからです。
経営判断の誤り、制度の不備、環境の変化、組織の脆弱さなどを理由に挙げます。
もちろんそれもあります。

でも、日本の産業界全体としてここまで深刻になったのはそれだけではない。
というのが現場レベルで見た感想です。

 

分野に関係なく起きる問題

 

同じことは他の業種でも起っているはずです。
自動車なんかもどこが作っても同じような車ばかりになってますね。

家電メーカーの方が衰退が早かったのは理由があります。
デジタル機器は工作機械をそろえ(その機械は日本製)、設計が分かれば真似はしやすいです。

自動車はエンジンを含めノウハウのかたまりなので、そう簡単には高いレベルの模造品は作れません。
とはいってもアメリカ市場では日本車は韓国メーカーの追撃に会ってました。円安、ウォン高で助かりましたが。

以上が日本企業の衰退の内側です。
何度もいいますが、これだけが原因ではありません。
でも、マスメディアではあまり触れられてないので書きました。

ところで。

僕は2005年ごろ、会社が導入を進めていた成果主義制度について、
従業員側の一員として交渉にあたりました。
そのとき成果主義を勉強しましたが。
参考になったと思った本があります。

今、ブログに書いたことよりもこの本を読んだほうがもっと詳しく。
当時のことがよく分かると思います。

10年前の本ですが、今の日本企業がこうなってしまったのも分かるような気がします。
古本屋なら売ってると思います。

内側から見た富士通「成果主義」の崩壊 (ペーパーバックス)

余談ですが、そのとき作ったのはまだ単純な仕組みの制度でした。
賃金制度による弊害は他社よりも少なかったと思います。
制度以前に問題のある会社でしたが・・・
でも、別の会社に転職したときには驚くほど複雑な制度を見たことがあります。
そんな複雑な制度の会社が多いのは現状です。

今も残る成果主義の後遺症

今は成果主義制度も修正されてかつてほど酷い制度ではなくなっています。

でも、しっかり日本企業の仕組みとして定着しました。
当たり前すぎて「成果主義」という言葉は死後になってます。

しかし、新しいことに挑戦する企業は。
既存の企業からはあまり出てこないでしょう。

その一方で目に見える成果を出さないものは一人前の社員じゃないという風潮は強まりつつあります。

対価のともなわないうわべの成果主義。
あらゆる手段で人件費を下げるしくみ。

その考えは今も生きています。

自分の働いている企業が本当に自分の人生を預けてもいいものなのか。
考える時期に来ているのではありませんか?

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