リストラ交渉の終わり・僕たちの終戦

仕事の問題
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kousyou

 

経営不振で人員削減することになった僕の会社。
従業員の代表団の一員として会社と交渉しました。

希望退職の募集が始まり。
その後は整理解雇があるかもしれないという状況。

希望退職の募集期間の終わりの日。
募集は夕方就業時間の終わりまでする予定になってました。
募集の終了時間にはまだ2~3時間はあったと思います。

僕に会社から呼び出しがかかりました。
重要な連絡事項があるに違いありません。

僕は会議室に通されました。

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整理解雇は回避できたのか

 

入った会議室には会社役員。
その会社役員の口から出たのは

「整理解雇はしない」

という言葉。
その瞬間。体中の一気に力が抜けるような気がしました。
整理解雇は回避できた。という安堵感。

yatta

希望退職に応じたのは社員の約20%
会社が当初目標にしていた数には足りません。
「計算しなおした結果、これだけの人数でもやっていけると判断した」
ということですが。
人数は目標数ではないけど、人件費を計算すると目標金額に達しているという説明でした。
『どんな計算してたんだよ』と内心思いましたが。

当初の目標に届かなかったにもかかわらず整理解雇を回避したんですから。
会社としてはそう言うしかなかったのでしょう。
組合との交渉で目標を下げたとは言えないでしょう。

その後。交渉団の仲間を集めて報告と打ち合わせ。
さらに全従業員を食堂に集めて報告しました。
「整理解雇は回避されました」といった時の。場内のざわつき。
一刻の勝利ともいえる、高揚感に似た感覚すらありました。

どうしても譲れない整理解雇の拒否は勝ち取ったのです。

今までの交渉は無駄ではなかった。
そう思えた瞬間でした。

 

最悪を想定したシナリオでは

希望退職に応じた人の数はある程度は聞いてました。
直近の数からとても届かない。との思いはありました。
整理解雇に踏み切った時の対応も考えなくてはなりませんでした。

最終の選択肢は残します。それは「ストライキ」。銀行の介入しているこのタイミングでやれば会社がつぶれる可能性はあります。でも、こんな会社ならつぶれてもいいかなとは個人的には思ったこともあります。でも、そんなことしたら残された社員も困ります。交渉では口にしませんが、交渉団内部にも一部そういう意見はありましたし、僕もその選択肢はあると思ってました。結果として最悪の選択はしなくて済んだのです。

 

この判断が吉と出るか凶と出るか

希望退職者の数が当初の設定目標を下回った。
人数としては30%の目標が約20%にとどまった。
高給取りの人たちばかりが退職すれば、30%分の人件費に近くなるかもしれません。
でもそれにしても、目標を下回ってるのは確実です。

従業員の間からも「それだけの数であとは大丈夫なのか?」という意見はありました。
交渉団の中にもそういう意見はありましたが、整理解雇を回避したのですから。それ以上の追求はしませんでした。

それでも去っていく社員はいる

satteikunakama

 

結果として強制的な解雇(整理解雇)は回避。希望退職だけで済ませました。
その結果、会社を去る人数は会社の目標としていた人員には達しませんでした。

これがいい判断だったかはわかりません。
人員削減は思い切って一度にやらないとダメ。
中途半端にやったのではダメ。
評論家はそういいます。確かにその通りだとは思います。

でも、従業員の代表としてそれに賛成出来るでしょうか?
整理解雇は回避できました。
それでも、辞めていく従業員はいます。
希望退職に応募したとはいえ、応募がなければ会社を辞めなかったであろう人たち。
一人一人がどのような想いで希望退職届を出したのかわかりません。想像はできますし、会話や雰囲気で察することはできます。でも本当の気持ちまではわかりません。

それでも去っていく人たちがいるのは事実なのです。
全ての従業員は守れませんでした。

退職手続きが始まります。
会社から渡された退職者のリストを見ると確かに高齢者が多いです。
もともと会社自体がそういう人員構成にはなってました。年齢と人の数をグラフにすればいわゆる逆ピラミッド型に近くはなります。

個人的には、若くて将来有望な人ほどほかの会社を探してほしいという想いはありました。でもそれは僕個人の希望。口には出せません。

圧力はなかったのか

期間を通じて、会社から圧力を受けたという相談はありませんでした。
別会社での解雇を聞いてるといたたましい事例もあります。僕の耳にも入ってくるほどです。それがなかったのは。不幸中の幸いでした。

「希望退職者だけで目標人数が達成されないときは整理解雇する」と会社は言ってたので、それが心理的プレッシャーになった人はいると思います。社員の人から「整理解雇があるなら、先に辞めようと思う」と聞かされたことはあります。僕としては「整理解雇があるとは決まってないです」というのが精一杯でした。僕たちはそれを撤回させるために交渉してたのです。でも、絶対回避できるという自信はありませんでした。

僕のいた会社は従業員200人足らずが同じ敷地で仕事してる会社。名前までは知らなくても、従業員の顔を覚えられるような組織です。解雇に神経質になってる状況で、周囲に知られないように強引な退職工作ができる会社には思えませんでした。希望退職した人全員に会いましたが、会社からの圧力があったとは聞かされませんでした。

ただし、管理職と組合は無関係。管理職は一方的に解雇が言い渡されても仕方ありません。そこはあえて知ろうとは思いませんでした。むしろ「管理職の首を切れ」という思いでしたから。交渉の場ではそんなことも言ったかもしれないですね。もう覚えていませんけれど。

交渉は終わってもやることは山積

 

hinann

 

辞めていく人たちに何ができるのでしょうか。
僕たちにできることは積み立てた組合費からいくらかの餞別金を出すことくらいでした。もちろん残った人たちの賛成を得た上での話です。

辞めていく人たち一人一人に餞別金を手渡しました。
仕方ないという声もありましたが。
中には厳しい意見もありました。
仕方ありません。

希望退職とはいっても皆が皆、好きでやめるわけではないはず。
でもおそらく希望退職の募集がなければそのまま会社にいた人たちです。

雇用を守るという組織結成以来の目的が初めて破られた瞬間でした。

その後、残った人たちで会社を立て直す日々が始まりました。
労働組合も組織の建て直し。
残った従業員の気持ちをまとめるのは容易ではありません。

人員削減が行われるまで自分の信じていた会社の状況判断は甘かった。
僕にとっての敗戦です。

敗北感を味わいつつも、その中で精一杯やったつもりでした。

活動の限界と意義、両方を味わった一か月でした。

続いて行われた賃下げ交渉

希望退職者が退職する前に組織の変更が行われ。
引継ぎのあと、社員の2割強の人たちが去っていきました。

その後に訪れたのは賃金削減交渉でした。
仕方ありません。
整理解雇を回避した代償です。
残った人も代償は払わないといけません。

どこがどう下がったのかは今となってははっきりとは思い出せません。
いえ、思いつく部分だけでも下書きしたら長くなったので省略しました。

従業員の反発はなく、すんなり会社のペースで進んでいきました。
変な言い方ですが、これほど楽な賃下げ交渉は経験したことがありません。

だれが悪いのか・だれもが当事者意識が低かった

確かに経営者は有能とはいえません。
有効な経営方針を出せないし、責任もとらない。典型的な無能な上層部です。

一方で社員の扱いは甘かった。いまどきのブラック企業に比べればぬるま湯体質です。
もちろん。従業員が頑張って待遇をよくしてきたのもあります。

経営者がもっと非情に徹すれば人件費を抑えられたし、もっと早い時期にリストラして回復できたかもしれません。

派遣社員は雇わない。正社員として採用する。という理想には共感できました。
だから会社の建て直しのためできるだけ協力しようという気にもなりました。

そういう僕も甘いかもしれません。

でも、会社は社員すべてを養える利益は出せなくなってました。

今思えば利益を生み出せるものを作り出せなかった僕達研究部門にもいくらかの責任はあります。会社は危ないな。という雰囲気はありましたが、小手先の新商品を出しても焼け石に水の状態。黒字回復させるほどのインパクトはなかったのです。上任せにせず、もっとどうすればいいのか自分達で考えるべきでした。

会社の将来を自分たちの身に起こるものとして捉えられてなかったのかもしれません。

そして迎えたリストラだったのです。

でも当時は経営に対する不満ばかり言ってました。
一方で現場からはヒット商品を出せない研究部門に対する風当たりは強くなります。
現場にしたってほかの会社からみれば楽なほうです。ほかの会社を経験すればそう思います。
社員のだれもが危機的な状況になるまで甘く考えてたように思えるのです。

でも、我々(従業員代表団)が頑張ったおかげで整理解雇は回避できた。
という想いはどこかにありました。

交渉相手がいないに等しい系列会社では整理解雇をやってるのですから。

しかし。
不幸はそれだけでは終わりませんでした。

二度目のリストラそして会社との決別。を読む

 

これまでのいきさつ
1:だまされた!では済ませられない・あなたの思い込みは大丈夫?
2:交渉団最前線に立つ・リストラ最前線
3:希望退職は仕方ない・リストラ最前線
 4:整理解雇の4要件とは・リストラ最前線

 

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