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日本企業衰退を早めた制度

ブラック企業

日本企業が衰退した原因はいくつかあります。

前回:家電メーカーの不振は10年前に決まっていた?ではその理由のいくつかをお話しました。

今回は企業の不振を助長するような制度についてのお話です。
もちろん、これは企業の一面だけをとらえたものです。
企業の衰退の全てを説明することはできません。

でも、人件費削減、見返りは少ないのに社員に成果を強く求める傾向。
今も問題になっていることがすでに10年以上前に始まっていた。
正社員でも働きづらい職場になった。
その現象の一部としてとらえると分かりやすいかもしれません。

今では当たり前すぎて死語になった成果主義。
その制度は何が問題だったのかお話します。

 

目次

成果主義制度の問題点

導入理由は人件費抑制のため

企業が導入した「成果主義制度」とはプロスポーツ選手の成果報酬とはかなり違います。

成果主義制度が目指すのは
人件費を減らすこと。
人件費を増やさないこと。

「社員のやる気をあげる」というのは口実です。

まず人件費の枠を決めます。
(出発から趣旨を間違えてる)
その範囲内で社員に人件費を分け与えます。

年功序列型賃金制度では
一律カットでもしない限り全体の人件費を減らすことはできません。
ルールが単純なので「何年勤めたらこのくらいの金額になる」と、分かりやすいからです。

成果主義の制度は複雑です。
賃金規定で賃金計算のルールは決まってます。
査定で変化する幅が大きいので誰が何故その給与なのか分からないようになってます。
そこがミソです。

収入が減っても「査定が低かったから」と納得してしまいます。

査定をするのは上司です。
人が人を評価するのですから主観が入ります。
そもそも、評価の基準が曖昧です。

サラリーマンの成果ってどうやって計算するんでしょうか?
営業成績?
じゃあ、工場や事務の人はどう評価する?
新製品を開発?じゃあ、基礎研究の間は評価されないの?
製品が売れなかったら全部開発者の責任?

大きな組織を動かすにはさまざまな役割の人がいます。
工場で生産している人。給与計算している事務の人。クレーム対応の人。
華々しい成果がなくても組織を維持していくために必要な人達です。

働かない人がいるからといって、賃金制度を変えて解決する問題ではありません。
人事制度や教育で対処すべき問題でした。
それを賃金制度の問題にすりかえてしまったのです。

成果が見えにくい、
評価の基準も分かりにくい。
にもかかわらずなにかと低く評価される。

しかも。
全体の人件費が決まっているのでは。
頑張った人が報われる制度にはなりません。

成果主義制度の賃金体系はこうだった

成果主義制度のもとで賃金がどのように割り振られていくのか説明します。

成果主義制度ではさまざまな項目で査定をして得点を出し。
ランクわけをします。
ここで紹介するモデルではAからCのランクに分けます。
実際には5段階から10段階以上までいろいろです。
ランクに応じてもらえるお金が決まります。

実際にはもっと複雑な給与体系になっている会社は多いです。
生命保険やスマホの料金体系なんか比ではありません。
一般社員が見ても全体が理解できないくらい複雑な制度を持つ会社もあります。

ここでは分かりやするため単純なモデルで説明します。

ある月の給料の合計を100万円とします。
Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさんの5人で分けることにします。

Aさんは評価100点 ランク Aです。 ランクAは30万円もらえます。
Bさんは評価80点 ランク B    ランクBは20万円
Cさんは評価50点 ランク B    ランクBは20万円
Dさんは評価30点 ランク B    ランクBは20万円
Eさんは評価20点 ランク C    ランクCは10万円

次の月。
Eさんは頑張って40点取りました。EさんはBランクになったのでしょうか。
Aさんは、前回よりも調子がわるかったので80点でした。AさんはBランクになったのでしょうか。

その結果はこうです。

Aさんは評価80点 ランク Aです。 ランクAは30万円もらえます。
Bさんは評価60点 ランク B    ランクBは20万円
Cさんは評価50点 ランク B    ランクBは20万円
Dさんは評価50点 ランク B    ランクBは20万円
Eさんは評価40点 ランク C    ランクCは10万円

AさんはランクA。EさんはランクCです。
Eさんは頑張って40点取りました。前回Dさんが30点でしたからそれを越えてます。
でもEさんはランクCです。何故でしょう。

実は、
この制度ではランクAになれるのは上位20%。
ランクCも必ず20%という決まりがあったのです。

だから、Eさんが頑張っても他の人が頑張ったらランクは上がりません。
逆にAさんは成績が落ちましたが、他の人はもっと悪かったのでランクは下がりません。

また、Aさんが仮に評価120とったからといって、Aの上があるわけではありません。
上位20%のひとりとしてAランクになります。

どのランク(等級)をどの割合作るかは会社によって違います。

どのランクをどの割合作るかは最初から決められているのです。
このやりかたを「相対評価」といいます。

絶対評価といってランクの割合を決めない方法もあります。
でも、
全体の100万円は変わりません。
だから。
全員Aランクなら20万円ですし。
全員Cランクでも20万円です。

ところで、毎月評価が変わる企業は少ないです。
半年とか年ごとに評価するところが多いようです。
賃金のばらつきはもっと小さいです。
イメージするための例えだと思ってください。

つまり。
成果主義の評価というのは、賃金にバラツキを作るためのしくみなんです。

頑張った人が報われるとか、
やる気が出る
というのを目的に作った制度ではないです。

全員下げたら不満が出るので、
頑張った人が沢山もらえるようなイメージを作る。
そのためのしくみです。

しかも、一律で給料が上がるわけではないので
自分が低く抑えられているのか判断できない。
意図的に低く抑えられても「成果が出てないから」と自分のせいにされてしまう。

これは多くの評論家もコンサルタントもマスコミも指摘しません。
ばれると都合が悪いからです。でも実際に会社と制度設計に関わった者からみるとバレバレの事実なんですね。

本当に成果を出したら報われる制度にしたいなら、プロスポーツ選手の様に上限なしにすればいいんです。
でも、人件費抑制が目的の制度なのでそれはできない。

これでは社員のやる気とモラルの低下が進むのはあたりまえです。

日本製品に欠陥が多発したのも、このあたりからだと思います。
仕事のミスはもちろん、ノルマ・目標の未達成等々・・・
分かりやすいマイナスポイントは即、収入の減少になります。

それなら、
失敗しないような無難な仕事をする。
目標が達成できなくても達成できたようにする。
問題があってもできるだけ報告しない。
そういう雰囲気ができるのは当たり前なのです。

では開発・研究の現場でどんな悪影響が出たのか
さらに詳しくみていきたいと思います。
日本企業の開発力が落ちたわけ

 

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 別に成果主義導入したから日本企業が衰退したわけじゃないですよ。

    成果主義導入してるのて増えてきたとはいえまだ少数だし、日本の伝統的な企業の大多数は年功序列だから論点がズレてると思います。

    というか日本の企業が衰退してる原因て単に会社を発展させれる人材がいないだけですから。特に日本て新卒採用である程度有名な大学卒業した人を毎年一定数採用しますよね。
    大体、採用された人間のバックグラウンドは似たり寄ったりの人間で、似たような考えをもった安定志向の人達です。結局、そういう人が増えて何年も経過して、管理職になると守りの経営に走り、自分達の保身や利益しかみなくなります。そうなれば、現状維持の経営に固執しますから、会社は成長せず、海外のライバル企業には押し潰され、衰退に向かいます。

    そういう問題を解決するには多様な様々な経験を有した、広いマインドをもつ人材を組織に入れないといけないんですが、残念ながら日本の企業は新卒一括採用主義なんで、そういう人材は入り口でシャットアウトされてしまいます。

    企業は我々はグローバル企業で多様な人材をもとめているといってますが彼らが実際採用するのは現代に必要な 人材とかけ離れた人達です。

    もし、真剣に考えるなら幅広い人材を取り入れるような雇用システムを作り上げるとこから考えるべきですね。

    まあ、日本企業は村社会だからそれは不可能に近いでしょうけどね。

    • 山さんこんにちは。おっしゃることも一理ありますね。
      もちろん成果主義だけが衰退の原因ではありません。働くものからみたある一面をとらえた現象ととらえてください。まあ、制度以前に新しい発想・チャレンジをしようという人がいなければ話になりませんよね。
      成果主義という呼び方はしてなくても、似たような賃金・評価システムは多くの企業で導入されてるようです。

      採用方法を変えても入ってきた人間は社内のシステムで教育されて会社の考え方に同化します。よほど個性のある人が権限のある立場(ここ重要)につけるようにしないと難しいでしょうね。

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